日本ではなぜ〝コンビニ受診〟が嫌われるのか?
それでは日本の状況はどうだろうか。日本において医療のコンビニ化は否定的な文脈で語られることが多い。コンビニ受診とは、日中から体の不調を自覚しながら、「日中は約束があるから」、「夜の方が空いているから」等の自己都合で、緊急処置が必要ないにもかかわらず、本来重症者の受け入れを対象とする病院の救急外来を休日や夜間に受診する行為だ。コンビニ受診は当直医・救急医を疲弊させ、医療崩壊を加速させる原因として批判を浴び、医療現場では忌み嫌われている。
嫌われる理由の一つは、夜の病院にはコンビニエンスストアと違い日中と同じ人数が待機しているわけではなく、日中と同じ診療体制を維持するのは現実的には困難だからだ。
コンビニ受診を抑制するために、自治体や医師会、病院は、ホームページを通じて患者の受診に関する意識変革を促したり、深夜受診や軽症受診に時間外加算を追加するなど金銭的なバリアーを設けたりしている。私も医師として働いていて、このコンビニ受診は非常に大きな問題と感じている。しかしその一方で、満たされない患者ニーズが存在することも事実だ。
現在、夜間の軽症者の受け皿として夜間休日診療所があるが、処方は原則1日で、翌日の日中に再度医療機関を受診することが求められる。しかし、この翌日受診が働くサラリーマンには困難で、最近は非正規雇用が増加し、「1日でも休んだらクビになってしまうから、日中には病院に行けない」、という話も聞いた。