私は、平成7年に大阪大学医学部を卒業し、学生のころからあこがれてた当時の第一外科に入局しました。周囲も私自身も、私が外科の領域でがんばっていくだろうと信じて疑っていなかったと思うのですが、実家が薬局だったということがきっかけで、外科医の道を離れて平成16年に薬局の代表に就任。あっという間に11年が過ぎました。
この転職(?)は、かなり驚かれましたが、実家に帰って気がついた問題を放っておけなくなったということも大きな理由でしたが、主には以下の3つでした。
1つは、薬局の薬剤師が患者さんに本当に役立つ仕事ができているのかが定かではないということ。もう1つは、薬剤師は本当にそれでやりがいある仕事だと燃えているのか疑問に思ったこと。そして、最後は、今のままで本当にこの国の医療はさらに良くなっていけるのだろうかと不安に感じたことです。
まず、1つめですが、医療機関を受診し現在の病状や治療方針の説明を受け納得した患者さんが、薬剤師に薬を渡してもらうことや説明を受けることのみを目的に薬局にいらっしゃっているのだとすれば、それは、本当に患者さんのためになっているのでしょうか?
ワンストップサービスが主流になるなかで、機械化とICTの発達は薬の準備や説明をわざわざヒトがすることの価値を相対的に低下させていることを考えれば、薬局にわざわざ赴き、薬剤師からある意味ではわかりきった説明を受けているような現状は、日本の医療の役に立たなくなっているのではないかと思いました。
薬剤師が専門性と社会貢献を実感できない!?
2つめは、多くの場面に遭遇する中で、このような現状に辟易とした薬剤師が、生活の糧と割り切って、もしくは、現状はこういうモノだと諦念して薬局で働いたり、場合によっては現状に耐えきれなくなって薬局での勤務や場合によっては薬剤師という仕事を辞めてしまったりすることに気がついたことです。
医療従事者にとっては、患者さんと向き合い、自分の専門性を駆使して、患者さんが少しでも良い方向に進めるようにサポートし、結果的に何らかの貢献ができたと自他共に認めるようになったときにわき起こる何とも言えない感覚や感情が欠かせないと思ってきました。しかし、現在の「調剤薬局」のあり方ではそれを薬剤師が実感することができないと痛感しました。
3つめは、高齢化が進む我が国で、急増する医療ニーズを、急増しない医療従事者で、お金をできるだけかけずに支えていきたいと考えられていることは何となく感じてきましたが、それを解決するために、薬局や薬剤師という社会資源を上手く活用することは、何かの変化がおこるきっかけになるのではないかと思ったことです。