寒い季節の深酒に注意! 酩酊状態で身体が冷えると長期入院が必要なほど危険状態に

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アルコール+身体の冷え=危険shutterstock.com

 極寒の北海道。2月のある朝、20歳代のサラリーマンがベッドより落下し、上半身裸で鼾をかいて寝込んでいた状態で発見された。発見したのは実家より帰宅した同居中の恋人だった。室内は暖房されておらず、呼びかけにはまったく応じなかった。吐いた息が酸っぱい臭いがしたため、救急車を要請した。

 付近には催眠剤14錠分の空包が発見された。救急隊が駆け付けた時は、血圧86/41mmHgと低く、呼吸は荒く、体温は35.9℃と低体温で、心拍数も120/分と頻脈で、光に対する反射も鈍かった。

 右の臀部と両足の膝から下にはそれぞれ直径12cm程度の範囲で炎症や鬱血、充血などで硬くなったり(硬結)や腫れがあった。当院に搬送後の採血では心臓をはじめ骨格筋、平滑筋など筋肉に異常がある場合に高い値を示すCPKが25,001 IU/L (正常値:300以下)、心筋梗塞や骨格筋疾患や腎不全などの場合高くなるミオグロビンが45,053 ng/mL(正常値:200以下)、さらに腎臓機能の異常を検査する尿素窒素45.0 mg/dL(正常値20以下)、クレアチニン4.90 mg/dL(正常値1.0 mg/dL以下)もそれぞれ上昇していた。

 また血液ガス検査などから体内はかなりの酸性の状態にあった。また尿の検査から催眠剤として処方された、フェノバルビタールが検出された。ベッドからの転落前に飲酒していたとすればすでに2日前である。それにもかかわらず、血中のエタノール濃度も高い。1日の尿量は僅か100 mLと減少していた。こうした検査の結果から、この患者さんは横紋筋融解症による急性腎不全と診断した。

 患者さんが10時間後に覚醒したときに問診したところ、やはり発見の2日前の夜に恋人を置いて一人で繁華街へ飲みに出かけた。最近は仕事上で悩みを抱えおり、ビールをジョッキー10杯、焼酎をストレートで数杯のみ、店を替えてさらにテキーラを数杯飲んだ。どのようにして帰宅したかは全く記憶にないとのことであった。最近、精神科でうつ病と診断されており、数種類の向精神薬、催眠薬を服用していた。 

横紋筋融解症と急性腎不全の治療のために緊急血液透析

 直ちに血液透析を3時間行った。体内の酸性状態やそれぞれの検査数値が改善され、エタノール血中濃度も低下したが、腎不全状態が持続したため、その後血液透析を合計9日間継続して行った。入院後15日目にようやく1日尿量は1200mLと増加した。腎臓の働きが正常化するまで17日が経過、患者さんが退院できるまで38日を要している。

 横紋筋融解症は筋肉の細胞が溶けて壊死が起こり、筋肉成分のCPKやミオグロビンが血液中に流れ出てしまう病気である。特にミオグロビンが腎臓に取り込まれて、尿が出にくくなって、急性腎不全を呈することがある。症状としては手足のしびれや痛み、手足に力が入らない、全身がだるい、歩行できない、尿の色がワインのような赤褐色に変色するなどを認める。建物の中などに長時間圧迫された体位で閉じ込められたりした際に起こる挫滅症候群や今回のように寒冷の環境下で意識レベルが低下した状態で長時間経過した際に起こる。冬山での遭難者でも同じような症状が認められる、最近では危険ドラッグの吸引で運び込まれた重篤な患者さんでも横紋筋融解症が見うけられる。

 フェノバルビタールなどの催眠薬、向精神薬をアルコールと同時に服用するとアルコールの体外への排泄が遅れるため、催眠薬などの服用の際には絶対にアルコールの併用は慎むべきであるし、泥酔後の低体温で、意識レベルが低下した状態のまま長時間放置することは極めて危険である。冬の時期、特に一人暮らしの人などは深酒には十分注意したい。
(文=横山隆 札幌中央病院腎臓内科・透析センター長)