失った歯の本数が寿命のバロメーター(shutterstock.com)
白くて綺麗な歯は健康美のシンボル。話したり、笑ったりするときの口元の美しさは、顔全体の印象を決める。ところで、永久歯の数は親不知を除くと28本だが、あなたは自前の歯が現時点で何本残っているか、把握しているだろうか?
「歯が悪い」とよくいわれる日本人だが、実は40歳ごろまでは、ほとんどの人が歯を失っていない。2011年に行われた「歯科疾患実態調査」によると、35~45歳の歯の数は平均28.08本。それが46~54歳で26.42本、56~64歳で23.25本と一気に減っていき、75歳オーバーでは13.32本と、5割以上が失われてしまう。
ご存じのように、国と日本歯科医師会は、平成元年から80歳で歯を20本残そうという「8020運動」を推進している。これほど歯の本数が重視されるのは、死亡リスクの高い重篤な疾病と歯の状態が、密接に関連していると言われるからだ。最近北欧で行われた次の研究でも、歯の本数と心臓や脳の障害との関連性が検証されている。
歯の本数が少ないほど死亡率が高い
この研究はスウェーデン・ウプサラ大学医療科学科のグループによって、昨年12月に「European Journal of Preventive Cardiology」に発表されたもの。39カ国・1万5456人の心筋梗塞や狭心症の患者を対象に、残っている歯の本数を申告させ、3年以上にわたって追跡調査を行った。心筋梗塞や脳卒中の発症との関連性を検証した。
その結果、歯が全くない人は26~32本ある人に比べて、すべての原因による死亡リスクが1.81倍となり、中でも心血管疾患による死亡リスクが1.85倍、脳卒中による死亡リスクが1.67倍になった。
つまり、歯がない人は、歯を失っていない人に比較すると、心筋梗塞や脳卒中で亡くなる危険性が高くなることが、大規模な医学的調査で改めて明らかになったのだ。
この件に関しては、過去にもいろいろなデータがある――。
2010年にアメリカで発表された41万人あまりを対象とした電話調査によると、失った歯が1~5本の場合、脳卒中のリスクは1.29倍、6本以上の場合は 1.68倍、全て失っている場合は1.86倍。失う歯の本数が多くなるほど脳卒中になりやすい。
また2012年に発表されたイギリスの研究もある。1万2871人の健康記録から歯の残存状況を「全て自前の歯」「義歯を併用」「全て喪失」に分類し、約8年間の心血管系疾患、がんによる死亡率との関連を解析した。その結果、歯を全て失った人は自分の歯だけで生活している人に比べて、総死亡率と心血管疾患による死亡率が著しく高く、特に脳卒中による死亡率は3倍近く高かった。半面、歯の本数とがんとの関連は見られなかったという。