シリーズ「再生医療の近未来」第9回

世界初、動物実験で“歯の再生”に成功! リーズナブルな費用での実用化は間近か!?

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リーズナブルな治療費で歯の再生医療を受けられる日が!(shutterstock.com)

 2015年現在、歯の再生は、マウスの動物実験で成功しているが、残念ながらヒトの歯そのものの再生は、まだ実現していない。

 歯の再生は、長年にわたって再生医療のビッグテーマだった。その突破口を開いたのは、2009年8月4日に発行の米科学アカデミー紀要電子版に発表された論文だ。

 論文によると、東京理科大学総合研究機構の辻孝教授(再生医工学)、東北大学の山本照子教授、東京医科歯科大学の春日井昇平教授の共同研究チームは、歯のもとになる歯胚(しはい)を歯茎に移植して歯を再生し、正常な歯の機能を再現するマウス実験を世界で初めて成功させた。

 この成果は、辻教授らが2007年2月に発表した器官原基法を応用したもの。器官原基法は、細胞を試験管内で培養し、立体的に機能する臓器形成をめざす細胞培養技術。臓器置換再生医療の実現に欠かせない基礎技術だ。マウス実験の成功は、義歯やインプラント(人工歯根)に代わる治療につながるとともに、iPS細胞による肝臓や腎臓などの臓器、毛髪などの再生医療の応用も期待されている。

 どのように再生したのだろうか?

誰もがリーズナブルなコストで歯の再生医療を受けられる日が!

 辻教授によれば、まず胎児マウスから歯になる歯胚細胞(上皮細胞と間葉細胞)をそれぞれ4~5万個取り出した後、コラーゲンの培地で培養し、歯の種となる再生歯胚(直径約0.5mm)を作製。この再生歯胚を成体マウスの上顎の奥歯を抜いた歯茎に埋め込むと、神経や血管を備えた再生歯が萌出した。

 再生歯は、歯茎移植の38日後に生え始め、約50日後に下顎の歯と咬合(かみ合わせ)ができる高さに成長した。ちなみに、マウスの50日はヒトの約5年に相当するという。

 また、再生歯に力を加えて矯正すると、通常の歯と同様に顎の骨と歯をつなぐ骨の形が変化し、食物をかめる硬さを示したため、再生歯と顎は機能的につながっていることが分かった。さらに、再生歯に刺激を与えると、マウスの延髄に歯痛を感じるタンパク質が生成されたことから、再生歯と脳の神経がつながっていることも確認した。

 マウスは系統が同じなら、異なる個体間での組織や器官の移植はできるだが、ヒトは臓器移植と同様の拒絶反応が起きる。現在は、拒絶反応の心配がない患者自身の歯や口内の組織細胞を活用して、歯胚を再生する研究が続けられている。

 う蝕や歯周病、加齢、事故や障害などで歯を失っても、誰もがリーズナブルなコストで、歯の再生医療を受けられる日が、もうそこまで来ているのだ。

 前述したように、この研究は、歯に限らず、毛髪や臓器へも応用可能な技術であり、臓器置換再生医療へ大きな方向性を示している。今後は、再生医療の実現化へ向けて、患者由来の形成細胞の探索、および移植後器官発生までの期間の短縮、生体外での再生器官育成システムの構築が課題となる。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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