認知症の初期の段階なら、専門医の適切な治療と周囲の支援によって、それまでの生活と同じレベルで暮らしている人は多い。また、正しい理解とサポートさえあれば、仕事もできる。認知症になっても、社会とつながっていたいと感じている人は少なくない。
東京・町田市のあるデイサービスの目玉は、有償ボランティアだ。レクリエーションや運動を行なうデイサービスが多いなか、この施設では「その日にすること」を認知症の利用者が選ぶ。「お昼ご飯の買い物」「デザートづくり」などに並び、「洗車」「チラシ折り」「野菜の配達」「保育園の雑巾縫い」などもラインナップ。謝礼がもらえるものもある。
また、ボランティアとして働きぶりが認められ、介護施設の職員として迎えられた初期認知症の人もいる。記憶が抜けがちなため、常にメモ帳を携えているそうだ。周囲も適切な時に声をかけてサポートしている。
当事者の声に耳を傾けよう
厚生労働省の認知症施策推進総合戦略「新オレンジプラン」によると、2012年に462万人だった認知症患者が、2025年には約700万人に増加する見通しだ。高齢者の5人に1人の割合だ。65歳未満の「若年性認知症」も、現在3万8000人にのぼる。
当事者も手をこまねいているだけでなく2014年10月、「日本認知症ワーキンググループ」を発足。当事者が声を上げて、「希望と尊厳を持って暮らし続けること」「共によりよく生きていける社会を創りだすこと」を目指す。政府への提言が、新オレンジプランに取り入れられた。
認知症の人が地域で安心して暮らしていくには、人々の理解が不可欠だ。認知症の正しい知識とさりげないサポートが求められる。あなた自身も、いつ認知症を発症するかわからないのだから。
(文=編集部)