アルツハイマー病の発症リスクが高い9因子とは? (shutterstock.com)
現代医学では完治が見込めず、予防法に注目が集まるアルツハイマー型認知症(AD)。その予防に関して、米研究チームが「ADの9つの修正可能な危険因子を修正することで、発症リスクを抑制できる」という可能性を示した。「修正可能な危険因子」とは、認知症を引き起こす可能性があるものの、これから直すことができる要素のことである。
米カリフォリニア州立大学サンフランシスコ校のJin-Tai Yu氏らは、323件(約5000例)の研究のエビデンスのメタ解析を行った結果、ADの9つの修正可能因子が世界のAD人口の3分の2に寄与している可能性が示されたと、8月20日の「J Neurol Neurosurg Psychiatry」(オンライン版)で報告した。
生活習慣の見直しが予防策に
研究では、解析を行った93種の潜在的危険因子のうち、どの程度が修正可能であるのか、またその修正によりAD発症リスクが下がる可能性があるかどうかを検討した。
集積症例数が比較的多かった因子(5000例超)のうち、薬剤関連の4因子(エストロゲン・スタチン・降圧薬・非ステロイド抗炎症薬の使用)と、食事関連の4因子(葉酸・ビタミンC・ビタミンE・コーヒーの摂取)が発症を防ぐ可能性のある保護因子だということが、グレードIのエビデンスをもって示された。
ADの発症リスクの上昇に有意に関連していたのは、生化学的関連因子のホモシステイン高値と精神疾患関連因子のうつ病だった(エビデンスグレードI)。
また、既存疾患関連やライフスタイル関連因子が担う役割は複雑であり、一部で民族的背景や年齢によってリスクの寄与度が異なることがわかった(エビデンスグレードI)。具体的に見ると、既存疾患では脆弱性・頸動脈狭窄・高血圧・拡張期血圧低値・2型糖尿病(アジア人のみ)がADリスクの上昇に関連する一方、関節炎・心疾患・メタボリックシンドローム・がんはリスクの低下と関連していた。
ライフスタイル関連因子では、低学歴・BMI低値・中年期のBMI高値がリスク上昇に関連する一方、認知的活動・喫煙(アジア人を除く)・適度な飲酒・ストレス・高齢期のBMI高値がリスクの低下と関連していた。BMIに関しては、さらなる解析を行った結果、全体的にはBMI低値がリスク上昇に関連することが示された。なお、職業関連因子に有意な関連性は示されなかった。