歯科用顕微鏡を導入後は患者との距離がより密接になったという。クリニックではまず最初に診査・診断をし、歯のX線写真をはじめ、顕微鏡で患部を隅々までチェックして問題のある部分を確認する。患者の訴えや臨床所見とこれらの映像を併せて診断する。患者への病状説明もこれらの映像を患者と一緒に見ながら行うので、患者自身の病気への理解が深まる。
「顕微鏡を導入しても、モニターが無いとしたら患者さんは何をやっているのか判らないのです。導入したての頃は、当院もまだモニターを入れていませんでしたから患者さんが戸惑ってしまうこともありました。顕微鏡で細かなところまでチェックするということは、肉眼で治療するときよりも患部の詳細が見えます。すると、慎重にすべきことが増えるので診療にも時間が掛かるのです。患者さんの中には”この医者はナンでこんなに時間がかかっているんだ”と不満な反応をみせることもありました」と三橋氏。
「当時はまだ顕微鏡の扱いにも慣れていなかったし、技術も不足していたので、今以上に時間がかかっていました。いま考えるとお恥ずかしいような治療もありましたよ。でも、見せることで患者さんも納得してくれるようになった。治療のプロセスを患者さんも見て、何が起こっているかを知ることができるわけです。患者さんがモニターを通じて自分の歯の状態を確認し、医師が何をしているかを知ることによって、信頼関係も自然と深まっていくのです」
(インタビュー・文=名鹿祥史)