喫煙よりも「受動喫煙」のほうが危険! 男性では歯周病リスクが3倍以上に!

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副流煙のほうがニコチンが多い!shutterstock.com

 ご存じの通り日本における喫煙率は年々下がり、今は街中や職場での分煙も進んできた。タバコを吸う人にとっては窮屈な世の中になったが、吸わない人にとっては歓迎だろう。それでもやはり、タバコから立ち上る副流煙や、喫煙者から吐き出される煙を吸ってしまう「受動喫煙」を完全に避けることは難しい。

 タバコを吸わない人にとって受動喫煙は、「目が痛くなる」「むせる」などの不快感だけでなく、実際に健康被害をもたらすことが、さまざまな調査研究で指摘されている。この夏に報告された東京医科歯科大学と国立がん研究センターの共同研究チームの研究では、日本人男性は受動喫煙により「重度の歯周病」を発症するリスクが3倍以上も高まることがわかったという。

家族の煙をはっきり避けるから? 女性は影響なし

 この研究は、生活習慣とがんなどの生活習慣病との関連を追跡する「多目的コホート研究」の一環として実施されたもの。1990年に生活習慣などのアンケートに参加した40〜59歳の男女を対象に、歯科アンケートと歯科検診を受けてもらい、1164人(男性552人、女性612人)のデータを採用した。

 研究グループは、対象者を男女別に、「受動喫煙経験のない非喫煙者」から「喫煙者」までの6つのグループに分け、「6㎜以上の歯周病ポケットが1歯以上ある場合」を重度の歯周病と定義し、解析を行った。

 その結果、男性の場合、タバコを吸う「喫煙者」が重度の歯周病を発症するリスクは、「受動喫煙経験のない非喫煙者」と比べて約3.3倍に跳ね上がった。しかも、自分自身がタバコを吸わない「非喫煙者」であっても、「家庭および、家庭以外でも受動喫煙経験のある人」の発症リスクは約3.6倍となり、「喫煙者」を上回る数値になった。さらに、「家庭のみで受動喫煙経験のある非喫煙者」も約3.1倍と高く、「家庭以外のみの受動喫煙」の場合は約1.3倍だった。

 ところが、なぜか女性には、喫煙・受動喫煙の状況と歯周病との間に関連は認められなかった。

女性は意識的に家族が吸うタバコの煙を避けている?

 研究グループの報告では「理由は不明」としながらも、女性は男性より「タバコをがんの原因」と認識する割合が高く、家族が吸うタバコの煙も意識的に避けているために、アンケートの回答より実際の受動喫煙機会は少なかったのかもしれないと憶測している。

 さらに、女性はタバコのニコチンや代謝物のコチニンを、男性よりも速く体外に排出するという報告もあることから、「男性よりもタバコの影響を受けにくい可能性がある」とも述べている。

喫煙者自身よりも健康被害が深刻に?

 ところで、なぜ喫煙が歯周病の原因となるのか?

 タバコを吸うと血液中にニコチンが入り、毛細血管が収縮して歯茎への血流が悪くなる。また、全身の免疫機能を低下させるため、歯周病菌に感染しやすくさせる。受動喫煙でも同じメカニズムが働くと推察される。

 タバコの副流煙には、フィルターを通して吸う煙よりニコチンが多く含まれているため、受動喫煙が多い人は喫煙者よりも歯周病のリスクが高いのかもしれない。歯周病が重症化すると、歯を支える骨が溶け出し、健康な歯も抜け落ちてしまう。

 言うまでもなく、喫煙は歯の健康のみならず、がんや循環器疾患などのリスクも上げる。せっかく健康のために禁煙しても、意識して受動喫煙を避けなければ無意味なのだ。受動喫煙は、社会全体の取り組みで避けることのできるリスク要因。「分煙」を一層進めるとともに、喫煙者には、タバコが周囲人の健康にも深刻な影響を与えるという意識をより強く持ってもらう必要があるだろう。
(文=編集部)

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