「備えあれば憂いなし」――防災について論じられる際に、よく用いられる故事だが、病気も同じだ。先月、東京・大田区民プラザにて特定非営利活動法人オレンジアクトが主催するシンポジウム「知ってトクする認知症の備え方」が開催された。
シンポジウムに先立ち、「2015認知症フレンドリーアワード授賞式」が行なわれた。受賞したのは、一般社団法人あなたの後見人、認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ、プロジェクトチーム・ディメンティア、NPO法人認知症フレンドシップクラブ、レビー小体型認知症の当事者として出版や講演活動を行なう樋口直美氏など。式典にはディメンティアが開発した認知症サポート・ロボット「ニンニンPepper」のも登壇し、達者な喋りと動きで会場をわかせた。
かかりつけ医と経験豊富な認知症サポート医の連携が大切
シンポジウムではまず、認知症サポート医として知られる、たかせクリニック理事長の高瀬義昌氏の講演が行なわれた。現在、高瀬医師が特に力を入れているのが認知症の人たちの「薬の問題」。薬の飲み忘れ、飲み過ぎ、あるいは飲み合わせなどにより、認知症そのものが悪化しているケースも多いと指摘する。
「認知症の人が1回に3、4錠もの薬を1日に3回も4回も飲むのは、本人にも家族にも大変なことです。飲まずに置かれたままになっている残薬の問題も起きてくる。75歳以上で500億円の残薬が家庭にあるといわれますが、医師としての実感からいうと、その20倍ぐらいはあるのではないか。薬をコントロールすることで、ほとんど寝たきりだった人が2年後には買い物にも出られた例もあり、今後さらに力を入れていきたい」
アルツハイマー型に他の病気が合併することで病状は複雑になっていく。そのとき、注意深く服薬しつつ、薬のケアも行ない、同時にかかりつけ医と経験豊富な認知症サポート医の連携が大切になっていくだろうと指摘した。