乳がんの検診に関してはさまざまなデータや指摘が飛び交う。今年の「JAMA Internal Medicine」7月6日号には、米ハーバード大学およびダートマス大学による研究でより、マンモグラフィーによる定期的な乳がんスクリーニングが「過剰診断」の原因となり、一部の女性が不必要な治療を受けている可能性のあるとの研究報告がなされている。
この研究に対して、米国がん協会(ACS)は、マンモグラフィーの必要性に疑問を抱く女性が増えることに懸念を示し、これまでの研究ではマンモグラフィーによって40歳以上の女性の乳がんによる死亡率が少なくとも20%低減することが明らかにされていると主張している。
http://consumer.healthday.com/cancer-information-5/breast-cancer-news-94/is-mammography-leading-to-overdiagnosis-of-breast-cancer-701017.html
また昨年は、スイス医療委員会が“マンモグラフィー検診は乳がんによる全死亡率を低下させない”と結論づける論文をニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に掲載している。この論文では、検診の有効性に疑問を投げかけ、さらに過剰診療の危険性に言及し、検診の廃止までを勧告している。
Biller-Andorno N et al. Abolishing mammography screening programs? A view from the Swiss Medical Board. N Engl J Med. 2014;370:1965-7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24738641
しかし、どのがんでも早期発見の有用性を否定するものは無いだろう。乳がんの場合でも、早期といわれるのは、「Tis期」~「I期」まででは、治療後の10年生存率は9割近い。
だが、メットライフのアンケート調査で、乳がんに対する危機感や不安を感じていない人が半数以上いる。45歳を超えるそうでは、この危機感や不安が高くなる。
家庭を持ち、子どもの成長を見守り、守るべきもの、頼るべき相手の存在があれば、それを喪失することへの危機感は高まるのか。しかし、そんな存在のあるなしにかかわらず、やはり、転ばぬ先の杖は必要ではないのか?
(文=編集部)