カマンベールチーズが認知症予防に効果?
世界2400万人の認知症患者に朗報か――。カマンベールチーズの摂取がアルツハイマー病の予防に役立つ可能性があることが発表された。
現在、日本で460万人、世界で2400万人近くが認知症を患っているとされている。日本の認知症患者は、2012年時点で約462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症だ。さらに団塊の世代が75歳以上となる2025年には、65歳以上の高齢者に対する割合が約5人に1人に増える見込みだ。
認知症の中でも、最も多いのが「アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)」。アルツハイマー病は、気づいたときには進行が始まっており、記憶だけでなく判断力や言語機能など大脳の機能全体が低下していく。
だが、アルツハイマー病には十分な治療方法が開発されていないため、日々の生活を通じて予防する取り組みが注目を集めている。日本国内では急速な高齢者の増加に伴い、認知症は社会的な関心事となっている。
今回、カマンベールチーズの摂取がアルツハイマー病の予防の可能性を報告したのは、キリン株式会社の基盤技術研究所。小岩井乳業株式会社、東京大学大学院農学生命科学研究科と共同で乳製品のアルツハイマー病の予防効果を調べた。
その結果、カマンベールチーズの摂取がアルツハイマー病の予防に役立つ可能性があることを確認。この研究成果は、米・科学誌『PLOS ONE(プロスワン)』(2015年3月11日号)に論文掲載された。
発酵乳製品のアルツハイマー病予防効果のメカニズムを初めて明らかに
論文では、カマンベールチーズには、脳内の老廃物を除去する機能活性化に有効で抗炎症活性を示す成分が含まれており、アルツハイマー病への予防効果のメカニズムが初めて明らかにされた。
チーズなどの発酵乳製品を食べると、老後の認知機能低下が予防されることは、すでに報告されていた。だが、その予防効果のメカニズムや有効成分は分かっていなかった。今回の実験はそこに着目。
アルツハイマー病モデルのマウスに市販のカマンベールチーズから調製した餌を摂取させると、脳内のアミロイドβという物質の沈着が有意に抑制され、脳内の炎症状態が緩和されることが確認された。アルツハイマー病は、アミロイドβが脳内にたまり、神経細胞が死滅して発症すると考えられている。
さらに今回、有効成分としてカマンベールチーズにオレイン酸アミドとデヒドロエルゴステロールが含まれていることも発見した。オレイン酸アミドは、脳内のアミロイドβなどの老廃物を除去する役割を担う、「ミクログリア」と呼ばれる細胞を活性化しながら抗炎症活性を示す成分。また、デヒドロエルゴステロールは、抗炎症活性を示す。これらの成分は、乳の微生物による発酵過程で生成されたと考えられる。
チーズは脂質が多く、タンパク質も豊富だ。だが高カロリーのため「太るのでは」「コレステロール値が高くなるのでは」という心配がある。だが、安心してもらいたい。チーズは、食後に血糖値を上昇させる炭水化物をほとんど含まない。体脂肪の代謝を助ける働きを持っているビタミンB群や、皮膚の健康を保ち、免疫力を向上させる効果があるビタミンAも豊富だ。
一方、コレステロール値についても今年、米・厚生省と農務省による食事指針諮問委員会」が「コレステロールは過剰摂取を心配する栄養素ではない」という報告書を公表。米国人の食生活に関するガイドライン(2015年版)でも示される。
チーズには、身体を維持するうえで欠かすことのできない栄養素のほとんどが含まれている。認知症予防に限らず、積極的に摂取すべき高栄養食品として勧めたい。
(文=編集部)