カテキンの一種である「没食子酸エピガロカテキン」に効果がdorry/PIXTA(ピクスタ)
認知症の約50 %を占め、男性よりも女性が罹りやすいといわれる「アルツハイマー型認知症」。それ以外のタイプ(脳血管性認知症など)の患者数が横ばいであるのに対し、年々増加傾向にあると報告されている。
現在、予防のための研究が世界で盛んに行われているなか、日本人に馴染み深い緑茶の存在がクローズアップされた。5月4日、米ミズーリ大学の研究者らによって発表された論文で「緑茶の摂取と運動の相互作用でアルツハイマー病を予防し、進行を抑える効果がある」という見解が示されたのだ。
茶カテキンでマウスの認知が回復
アルツハイマー病は、脳内に
最近の研究では、アミロイドβペプチドの蓄積が引き起こす慢性的な炎症がアルツハイマー病の発症に関係していると判明している。そこで、食物由来の抗酸化物質に発症のリスクを下げる効果があるのではないかと考えられている。
ミズーリ大学の研究チームは、アルツハイマー病状態にしたマウスを使って、緑茶に含まれるカテキンの一種である
まず、マウスの認知機能を調べるために「迷路を走らせる実験」と「巣作りをさせる実験」を行った。アルツハイマー状態にあるマウスは、安定感に欠ける不完全な巣しか作れなかったり、巣作りそのものに関心がなくなったり、さらには巣の作り方をすっかり忘れているケースもあった。
そこでマウスの飲み水にEGCGを混ぜて飲ませ、回し車などによる運動を促すことを4カ月続けた。そして迷路と巣作り実験を再び行ったところ、どちらの実験でも成績が大幅にアップ。記憶能力と認知機能が改善されていることが確認された。
さらにマウスの脳組織を調べてみると、アミロイドβペプチドの蓄積レベルも下がっていることも確認され、行動障害においても改善がみられたという。
毎日の緑茶習慣もリスク低下に
今回の実験はマウスによる成果だったが「EGCGの摂取は、ヒトのアルツハイマー病の予防だけでなく、治療にも進歩をもたらす可能性を示唆するものだ」と研究者は述べている。
一方、金沢大学では、2014年に緑茶の飲用習慣と認知機能に関するコホート研究の結果を発表している。
認知の異常がなかった60歳以上の人を対象に、緑茶・コーヒー・紅茶を飲む頻度と、その後の認知機能低下との関連性を分析。5年後の認知機能の低下リスクを比べてみると、緑茶をまったく飲まない群に対して週に1~6 回飲む群では約1/2、緑茶を毎日飲む群では約1/3に減少していた。ちなみにコーヒーや紅茶では、認知機能低下との関連はみられなかったという。
こうした研究からも、緑茶と適度な運動が認知症のリスクから我々を守ってくれる可能性は高そうだ。緑茶カテキンを利用した予防医学や治療法の開発は、今後の研究に期待したい。運動の習慣とともに"健脳"のために、毎日緑茶を飲む習慣をプラスしてはどうだろうか。
(文=編集部)