シリーズ「再生医療の近未来」第7回

約80%が肝がんを発症する肝硬変の再生医療――生体肝移植の限界を克服するために注目を浴びる

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肝硬変の患者数は約40~50万人(shutterstock.com)

 肝臓も心臓も腎臓も、人間が生きるために欠かせない大切な臓器だ。これを肝心(腎)要という。肝臓は、腹部の右上、横隔膜の下にある。体重の約50分の1、約1.3kgを占める体内最大の臓器。大量の血液と酸素、500種類もの酵素を縦横に活かしながら、体のホメオスタシス(恒常性)をコントロールしつつ、生命活動の根幹を握っている、まさに肝心要の存在、生命の屋台骨だ。

 代謝、解毒、胆汁分泌は、肝臓の3大機能だ。代謝は、タンパク質、ビタミンなどの栄養素やアルコールを分解・合成する働き。解毒は、ウイルス、毒素、腫瘍細胞、壊れた赤血球、アンモニアなどの有害物質を水に溶けやすく無毒化し、尿や胆汁と共に体外へ排泄する働き。胆汁分泌は、タンパク質や脂肪を分解して腸管からの吸収を促す胆汁という消化液を作る働き。胆汁の97%は水分、3%は胆汁酸、コレステロール、リン酸、脂肪酸、ビリルビンだ。

 肝硬変は、代謝、解毒、胆汁分泌の3つの機能が正常に働かなくなる慢性疾患。肝硬変になると、体にどのような変化が起きるのだろうか?

 まず、代謝の働きが弱まれば、肝細胞が著しく障害を受けるので、合成されるタンパク質も血液中のタンパク質も激減する。その結果、浸透圧の低下によって血液が水っぽくなる低アルブミン血症を引き起こし、浮腫(むくみ)や腹水(腹に水が溜まる)の症状が出る。低アルブミン血症に陥ると、肝臓でアルブミンという有効なタンパク質を合成できないので、慢性肝炎や肝硬変の発症につながる。

 また、アンモニアが解毒されなければ、大量に生じたアンモニアが尿素を処理できなくなり、尿素サイクル酵素欠損症を起こす。さらに、大量のアンモニアが腸管から吸収されると、血流によって脳に運ばれ、肝性脳症という重篤な意識障害を引き起こす。

 さらに、肝細胞が阻害され、毛細血管への胆汁の排泄が乱れると、血液中に胆汁色素のビリルビンが増加するため、皮膚や粘膜が黄色く染まる黄疸を引き起こす。浮腫、腹水、肝性脳症、黄疸を起こして、すでに肝機能が十分に果たせなくなった病態を非代償性肝硬変(ひだいしょうせいかんこうへん)と呼ぶ。

 このような代謝、解毒、胆汁分泌の異常が続くと、B型肝炎やC型肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎などの慢性肝炎が進行する。肝細胞の減少、肝組織の硬化、コラーゲン線維の蓄積、肝機能の低下によって肝硬変が進行すれば、およそ10年以内に約80%の患者が肝がんを発症するという。日本の肝硬変の患者数は、約40~50万人。内訳はC型肝硬変60%、B型肝硬変15%、アルコール性肝硬変12%。肝硬変の内科的な根治療法はないので、外科的な生体肝移植が唯一の治療法だ。

 生体肝移植は、健康なドナー(臓器提供者)から肝臓の一部の提供を受ける手術。現在、日本では脳死や心停止後の肝移植が少なく、年間約400件の生体肝移植が行われている。だが、ドナー不足のために治療を受けられない患者が多い。日本移植学会は、ドナーの負担が大きいことから、提供は本人の自発的な意思を尊重する、ドナーは親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)に限定するなど、厳しいガイドラインを定めている。

肝硬変の再生医療は、どこまで進んでいるの?

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