介護と共生可能な社会の夜明けが来る! つくし/PIXTA(ピクスタ)
今年(2015年)は、わが国が、育児休業や介護休業を謳った「ILO(国際労働機関)」の第156条約を批准して20年になる。「家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約」である。
"家族的責任条約"といわれるこの条約は1981年に採択された。だが、日本では育児休業の法制化(1992年)とそれに続く介護休業の法導入後、1995年にやっと批准となった。介護休業の法施行はそれから4年も待つことになった。
「家族的責任」といえば、何か家族の義務といわれているようにも聞こえるが、条約の精神はそうではない。
家族のケア役割における男女平等とともに、ケアを引きうけることで労働者が不利益を被ることがないよう、条約批准国に各種の保護や便宜提供を義務付けたものだ。むしろ、家族のケアを引き受けるための権利条約ともいえる。
介護者の過半数は"ワーキングケアラー"
育児や介護という家族のケアに、"接続可能な働き方"を世界標準とすべきだという主張だ。日本は1年間(2011年10月~2012年9月)で、出産・育児退職は26万人、介護退職も10万人に上る。
「マタハラ」という言葉が生まれ、深刻な保育所不足も指摘される育児期もそうだが、介護期における雇用環境もまったく無防備な状態といえよう。
働きながら介護する人は290万人を超え全有業者の20人に1人を占める。50代後半では、10人に1人。介護者全体の視点で見れば、その過半数は働いている人=ワーキングケアラーだ。
性別では、男性は130万人、女性は160万人が介護をしながら働いている。その多くが、40代~50代の職場と家計を支える人たち。男女の働き方は、正規・中核的な男性社員と非正規・周辺的な女性社員が特徴だ。そこで、仕事と介護の環境を巡る問題は、男性に焦点化することで、より尖鋭に把握できるだろう。