"ストレス撃退"のコントロール法は、脳内物質の放出促進にヒントが......

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水泳などの有酸素運動が脳内神経物質を放出 Elina Manninen/PIXTA(ピクスタ)

 人は生きているかぎり、毎日ストレスにさらされ続ける。仕事のプレッシャーやうまくいかない人間関係、気候の寒暖や引越しなどの環境の変化、体の痛みや痒みなどの直接的な身体へのストレスなど。意外だが、恋愛や昇格などの喜ばしいことも心理的なストレスになる。

 ふりかかるストレスを受け止めるのは、心の情動作用だ。「喜怒哀楽」は、その人の受け止め方次第ゆえ、ストレスはプラスにもマイナスにも作用する。

 たとえば、上司の小言に対して、「悔しい」「許せない」「コイツとは二度と仕事をしたくない」とネガティブに捉えるか、それとも「嫌なヤツ」だと思いつつも聞き流したり、「なにくそ」と反発したりして、仕事にまい進できるか。

 "心のチャンネル"の切り替え(ストレス処理)の積み重ねは、うつ病などに進行するかどうかの別れ道となる。

運動によって脳内神経物質の放出が促進する

 

 自身の心をコントロールすること以外に、日常のなかで取り入れることができる、有用なストレス管理にはどのようなものがあるだろうか。心療内科・精神科の北山クリニック(東京・西東京市)院長の北山徳行医師は、次のようにアドバイスする。

 「たとえば、仕事や家事はあらかじめ終了時刻を定めて取りかかり、その時間内に終えるように努めること。制限時間というリミットを設けることで、業務や活動中に適度な緊張感が維持され、作業効率と生産性の向上を実現できる。これがストレスの上手な管理法だ」

 山積みされた書類と深夜までダラダラと格闘するのは愚の骨頂。制限時間というストレスが、メリハリある仕事につながるはずだ

 また、北山院長は「運動」を勧める。「ジョギングや水泳などの有酸素運動を適度に行うと、抗うつ剤と同様に働く、セロトニンやドーパミンなどの脳内神経物質の放出が促進される。いくつもの研究報告がなされており、うつ病の予防や回復期の補助療法として、運動は有用だ」

 ちなみに、ジョギングや速足ウオーキングなどの有酸素運動は、他人と会話できるくらいの軽く汗ばむ程度の運動量に留めるのが理想的だという。

うつ病の補助的治療でヨガの効果が実証される

 だが、ストレスに押し潰されてうつ状態に陥ってしまったら、抗うつ剤などの内服薬以外に有効な手段はあるのだろうか。

 2013年8月、独デュースブルグエッセン大学(デュースブルグ)で、研究者らが「ヨガのうつ病効果」というテーマの研究を報告した。619例を解析すると、うつ性障害のある患者のなかでも、その症状が重い12件でヨガの有効性が示されたという。

 うつ患者にとって、補助的な治療の選択肢のひとつであることが明かになった。ヨガの深い呼吸によって肺や横隔膜を動かすと、全身の血流がよくなり自律神経が整う。瞑想や集中、ポージングは、うつ症状を緩和するともいわれている。

 ただし、北山医師は「ヨガが有効だというサンプルが小さい。症例を増やして、統計的にも信頼性を確立していくべきだろう。ヨガの多種多様な技法から、精神疾患の補助治療としてより効果的なものを抽出していく必要がある」と指摘する。

 ストレスの上手な対処は、現代人の大きな課題だ。「制限を設けた緊張感の維持」「有酸素運動による脳内物質の放出」「ヨガによるうつ病の緩和」、精神の安定の一法としても試してみる価値はありそうだ。
(文=編集部)

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