連載第17回 いつかは自分も……他人事ではない“男の介護”

"ハイブリッドな知の宝庫"が介護の世界を変える! アドバイスよりも「聴いてほしい」

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男性介護者も「本当は話したい」ファイン/PIXTA(ピクスタ)

 私が事務局長を務める「男性介護者と支援者の全国ネットワーク(男性ネット)」の活動は、丸6年を迎えた。介護者と支援者という立場で携わってきた。

 還暦を終えた今では、降圧薬の服用が毎朝の日課になり、脹脛の断裂の際は車いすや松葉杖のお世話にもなった。こんなことも重なって介護される側の心情も混ざり、私の活動の動力も今流行のハイブリッドになった。

介護体験に耳を傾ける

 

 「相づちを打つ間もない。話が尽きない」。男性介護者の会の主宰者の発言だ。課題を抱えた人の語りに耳を傾ける行為は、介護や子育ての分野でも重視され、「傾聴」という支援法のひとつになっている。語る人と良好な関係を築き、その人の精神的安定のサポートにも寄与するという。

 私は2003年度から数年にわたり、男性の介護体験を「聴く」ことを専門演習の課題にしてきた。学生がチームを組み、男性介護者をインタビューする。質問の項目は、介護が始まったときの気持ち、毎日の生活の様子、一番つらかったこと、一番うれしかったこと、これからの希望などだ。

 オフィシャルな場では鎧をまとっているような男性介護者も、無邪気で無防備な学生の前では口が滑らかになるようだ。介護にかぎらず、企業戦士として最も光り輝いていた現役時代の武勇伝にまで話は広がることもあった。

 忙しい時間を割いてもらい申し訳なく恐縮する学生に、「話を聞いてくれてありがとう」「こんな話をしたのは初めて」「人に話すようなことでもないけど」と、逆に感謝されたという。介護のまっただ中の介護者は、本当は話したいのだ。アドバイスよりも"ただ聴いて"ほしいのだ。

介護体験は「ハイブリッド」な知の宝庫

 

 男性ネットの介護体験を「語る/聴く」「書く/読む」プログラムもこの傾聴だが、もっと深い意味を持っているのではないかと考えるようになった。関係づくりという傾聴効果だけでなく、その「語られた」「書かれた」内容そのものへの関心からだ。

 私たちの介護体験記を「辞書のように手元に置いて繰り返し読もうと思う」と感想を記してくれた会員がいた。「医者や学者の一般的な話も分かるが、胸に落ちない。同じ介護者の体験記は自分の先行きを明るく照らしてくれた」とも記していた。

 私たちの取り組みが、介護者の語りや体験を素材にした"新しい介護辞書"づくりだとすれば、その社会的意義はなんと計り知れないことか。

 高齢者の語りの内容それ自体を重視し聴いた話を、家族や地域に継承しよう――。六車由美さんが提唱し反響を呼んでいる「介護民俗学」にも同様の視点を感じた。六車さんは、介護される高齢者が「教える側」に代わることで生きる意欲を取り戻すともいい、相互性のある新しい支援の可能性にも言及している(同氏著『驚きの介護民俗学』他)。

 「語る/聴く」「書く/読む」に、「教え/教わる」が加わりいくつもの動力を持つ"ハイブリッドな知の宝庫"となれば、介護の世界が変わる。

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津止正敏(つどめ・まさとし)
立命館大学産業社会学部教授。1953年鹿児島県生まれ。立命館大学大学院社会学研究科修士課程修了。京都市社会福祉協議会に20年勤務(地域副支部長・ボランティア情報センター歴任)後、2001年より現職。専門は地域福祉論。「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」事務局長。著書『ケアメンを生きる--男性介護者100万人へのエール--』、主編著『男性介護者白書--家族介護者支援への提言--』『ボランティアの臨床社会学--あいまいさに潜む「未来」--』などがある。

連載「いつかは自分も......他人事ではない"男の介護"」バックナンバー

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立命館大学産業社会学部教授。1953年鹿児島県生まれ。立命館大学大学院社会学研究科修士課程修了。京都市社会福祉協議会に20年勤務(地域副支部長・ボランティア情報センター歴任)後、2001年より現職。専門は地域福祉論。「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」事務局長。著書『ケアメンを生きる--男性介護者100万人へのエール--』、主編著『男性介護者白書--家族介護者支援への提言--』『ボランティアの臨床社会学--あいまいさに潜む「未来」--』などがある。

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津止正敏
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