連載第11回 慢性腰痛を深く知る

腰痛予防に「硬いベッド」は逆効果! 正しい姿勢で寝て腰への負担を減らそう

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 では、寝ているときの姿勢はどうしたらいいか?

 仰向けで脚を伸ばして寝ると、腰に負担がかかる。仰向けで寝る場合には、膝を軽く曲げて、その下に畳んだ座布団などを入れて支えるようにしよう。

 腰痛に優しい寝方としては、両脚を揃えた横向きがいい。走るときのように脚を前後にずらすと、バランスが崩れて腰に悪い。両脚の間には座布団をはさんだほうが、上になった側の腰への負担が少なくて済む。

 また、ベッドに横になるとき、起き上がるときが、いちばん腰に負担がかかるので注意が必要だ。起きるときは、ベッドの端で両脚を床に下ろしてから、上半身を持ち上げよう。寝るときは、まずベッドに腰掛け、上半身を倒して脚をベッドに引き上げよう。

柔軟性と筋肉が腰痛を予防

 

 ただし、このような腰痛になりにくい方法をレクチャーされても、柔軟性や筋肉がない人は、その姿勢をとるのが難しく、自然と腰に悪い姿勢を取ってしまう。たとえば、膝が弱い人や足首が硬い人は、しゃがむのがしんどいため、つい膝を伸ばしたまま上半身を折り曲げて、床から荷物を取りがちだ。この姿勢は、腰にとってはもってのほかだ。

 つまり、腰痛から身を守るためには、腰や膝、足首などの関節の柔軟性と周辺の筋肉を鍛えておくことが大事だ。

 座っている時間が長い人が特に気をつけたいのが、前側の脚の付け根の縮みだ。座っているときは、この部分が常に曲げられている。歩行の際、脚を前後に開いたときは、後ろ脚のこの部分が伸ばされる。そのため、この部分が縮んでいる人は、骨盤を前に倒し、さらにバランスを取るために腰から上半身を起こし、腰の部分が反った姿勢を取ってしまう。これが腰に悪い。

 前側の脚の付け根を伸ばすストレッチを、こまめに行いたい。ストレッチの方法は、脚を前後に開いて、後ろ脚の膝をしっかりと伸ばして、骨盤を起こす。余裕があったら、前のほうの脚の膝を曲げると、さらに伸ばすことができる。このストレッチで、後ろ脚のふくらはぎを伸ばせるので、足首の硬さもほぐせる。

 また、膝をかばうと腰に負担が来る。膝を悪くして膝をかばっていると、ますます膝周辺の筋肉が落ちて、その分、腰などに負担がかかる。膝に無理がかからないように、毎日少しずつ鍛えていくことが大事だ。

 腰痛を起こしやすいし、膝も痛みがちな人には、無理なくできる体操がある。背もたれのある椅子にきちんと座って、背をつけたままの姿勢で腹筋に力を入れて片膝を伸ばそう。それで痛みが出るような人は、脚をまっすぐ伸ばさず、床から10cm程度まで上げるようにしよう。この姿勢を5秒ほど維持する。逆の脚も同じことをして1セット。これを1日に5〜10セット行う。

 一般的な腹筋運動は、すでに腰痛があるような人にはきつすぎる。仰向けに寝て両膝を引き寄せ、両手で膝を抱えて、膝で大きな丸を描こう。腰が痛くなったり、だるくなった場合は、膝を抱えたまま揺りかごのように前後に揺れると腰がゆるむ。

 ここで紹介したような無理のない運動で柔軟性と筋肉をつけて、少しずつ正しい姿勢を取れるようにすることで腰痛が改善していくはずだ。

 最後に、一般的な腰痛に良い食事というのは特にないが、糖質の摂りすぎを抑えることで痛みが和らぐという説もある。炭水化物、特に白米や白いパンなど精製された炭水化物を多く食べている人は減らしてみよう。

 肥満は足腰に負担をかける。肥満を防ぎ解消できるような食事をすることが大事だ。食べ過ぎ、特に夜遅い時刻に摂る食事は肥満を招く。朝食と昼食はしっかり、夜は軽めを意識して、食事の際にはゆっくりとよく噛んで味わいながら食べることで、ストレスと肥満を解消したい。


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森田慶子

森田慶子(もりた・けいこ)
経験20年の医療ライター。専門医に取材し、その分野を専門外とする一般医向けに発信する医師向けの医学情報を中心に執筆。患者向けの疾病解説の冊子や、一般人向けの健康記事も数多く手がける。これまでに数百人を超える医師、看護師などの医療従事者から、最新の医学情報、医療現場の生の声を聞いてきた。特に、腰痛をはじめとする関節のトラブル、糖尿病、高血圧などの生活習慣病、うつ病や認知症などの精神疾患、睡眠障害に関する記事を多く手がけてきた。

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