連載第7回 慢性腰痛を深く知る

ギックリ腰になったら動かずにベッドで安静は逆効果! これまでの腰痛治療の常識が変わってきた!!

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これまでギックリ腰は「できるだけ動かずに安静に」が常識だったが...... shutterstock

 腰痛で病院に行けば、まずはレントゲンを撮られて、これといった問題が見つからなければ「腰痛症」というあいまいな診断名がつけられることが多い。治療はせいぜい痛み止めを渡されるだけ。ほとんどの場合、「しばらく安静にしてください」と言われてきた。医師の中には、「いつまでも腰痛が治らないのは『仕事が忙しい』などと言い訳して、必要なときに安静にせずにいるせいだ」と言う者もいる。

 ところが、内臓の病気や感染症など一刻を争う病気がない、原因がはっきりしない「非特異的腰痛」、つまりおおかたの「腰痛持ち」の場合、「レントゲンやMRIなどの画像検査を行うこと」「安静にすること」、そのいずれも「腰痛を悪化させることはあっても、改善には役立たない」という衝撃的な事実が判明した。

 そんなことを聞いても、「わたしの腰痛は、そのような気のせいのレベルとはちがう。椎間板ヘルニア(あるいは椎間板変性)だから、腰痛症なんかと同じレベルでは話せない。手術しないと治らない」と思っている人もいるだろう。

 だが調査によれば、腰痛を感じていない人の76%に椎間板ヘルニアが、85%に椎間板変性があり、椎間板ヘルニアでも椎間板変性でも、それが腰痛につながるとは限らないという。つまり腰痛で苦しんでいても、それらの病気が原因の場合もあれば、そうではない場合もある。そして、病気が原因ではない場合は、手術をしてもなんの効果もない可能性が高い。そもそも手術をせずに経過観察だけの診療をしてみると、9割のケースで椎間板ヘルニアは自然に治る。

 従って、現在、腰痛の専門医は、腰椎間板ヘルニアでも手術をあまり勧めないようになっている。

 しかし、こういった衝撃の事実が判明したのは、ほんのここ数年のことであるため、腰痛を専門としない医師には、いまだに安静を絶対とする医師が少なからずいるし、専門書を読んでも安静をすすめるケースが多い。

安静よりも運動をしたほうが絶対に改善する

 

 ヨーロッパの多くの国の腰痛に関する治療ガイドライン、そして日本の最新の「腰痛診療ガイドライン2012」を見ると、腰痛になった際に「安静にしないこと」が勧められている。特にベッドで安静に横たわることを勧めず、患者を安心させて、できるだけ動くようにさせるよう指導されている。

 海外で以下のような調査が行われている。急性腰痛の患者を、「2日間、トイレ以外はベッド上で安静」にしているよう指示したグループ、理学療法士が指導して「身体を前・横・後ろの各方向に10回1セットで動かす運動」を行ったグループ、「なるべく普段の活動をする」よう指導したグループの3つに分けて追跡調査をした。その後、腰痛の持続期間や程度、欠勤日数、仕事への支障のていどなどを比較したところ、明らかに「なるべく普段の活動をする」グループが最も良く、次に理学療法士が指導したグループで、安静にしたグループが一番悪い結果だった。

 また、日本でぎっくり腰を起こした人に対して行われた調査では、「腰痛が治るまでできるだけ安静を保つように指導された人」と、「動ける範囲内で活動するよう助言された人」の、翌年の再発率を調べたところ、安静を指導された人のほうが、動ける範囲内で活動を指導された人の3倍も、ぎっくり腰を起こしていたのである。

 安静が腰痛によくない理由はいくつか考えられる。椎間板の中央にあって、ぎっくり腰の際にずれて神経に触ることが多い髄核(ずいかく)は、運動すれば自然に元の位置に戻るのに対して、安静にするとずれたままになりがちだ。また安静にする必要があると考えた人は、「安静にしないと悪化する」と、動くことへの恐怖を抱き、腰痛に対して過敏になってしまう。その結果、ストレス性腰痛を招く。

 現在はベッドでの安静は最大2日までで、動けるなら初日からどんどん動ける範囲で動いたほうがいいとされている。