>  >  > 妊娠中に重要なのは葉酸、ビタミンB群、ビタミンD
インタビュー 生活習慣病の発症は胎児期に決まる 第2回 早稲田大学理工学術院総合研究所・福岡秀興教授

妊娠中は赤ちゃんの遺伝子機能を調整する葉酸、ビタミンB群、ビタミンDを積極的に摂ろう

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―遺伝子の働き(エピジェネティックス)に影響を与える、重要な栄養素を教えてください。
福岡:エピジェネティックスの働きのひとつに「メチル化」があります。メチル基がDNAとそのまわりにあるヒストンたんぱくに結合して、遺伝子の働きを調整します。その過程の一部に、葉酸やビタミンB6、ビタミンB12などのビタミンB群が関係しています。葉酸は、遺伝子の発現を制御して、核酸の合成や細胞増殖のために必要な栄養素です。葉酸が少なくなると、中間代謝産物のホモシスティンが高くなり、胎児期の遺伝子にエピジェネティックスの変化が起こります。

―葉酸の正しい摂り方を教えてください。
福岡:妊娠中の全期間で摂取することです。妊娠したときに葉酸が不足していると、二分脊椎症や無脳症などの先天異常が発生するリスクが高くなります。

 ただし、食事からは50%前後と吸収率が低いので、サプリメントの服用がすすめられています。1日400μgのサプリメントが目安です。しかし、過剰に摂取すると喘息(ぜんそく)などのアレルギーが発症しやすくなります。葉酸は遺伝子を調節する元になる栄養素ですので、摂取しすぎると遺伝子の機能にも変化が起こります。

 また、少なすぎても多すぎても望ましくありません。1日1000μg以上は摂らないように心がけましょう。

 しかし、葉酸のみが大事であると考えないでください。多くの栄養素をバランス良く摂ることが大事です。母子手帳には栄養素について書かれたページがあります。この部分は徹底的に読み、理解し、実践してください。

―他の栄養素で重要なものは何でしょうか?
福岡:ビタミンDも重要です。最近の妊婦さんは、ビタミンDの血中濃度が極端に低くなっています。それは食習慣の変化に加え、強い日焼け止めクリームを使い、日に当たることを避けることなどにより、皮膚でのビタミンDの生産量が減少しているからです。さらに、ビタミンDを多く含んでいる魚を食べなくなっているからと考えられます。日本では、夏場は10分、冬場は30分程度でよいので、日光浴を心がけてください。

―ビタミンDが不足するとどうなりますか?
福岡:ビタミンDは、主に骨の代謝に関係したビタミンですが、それ以外にも多くの作用があります。妊娠中にビタミンDが不足すると、胎児の中枢神経系や免疫系の発育にも影響します。また、産後のビタミンD不足は、くる病の原因にもなので、子どもにも日光浴をさせましょう。

―妊婦の望ましい食事の基本は何でしょうか?
福岡:ビタミンやミネラルをバランス良く含まれる和食が望ましいです。また妊婦さんは魚も積極的に摂りましょう。
(インタビュー&文=夏目かをる)

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福岡秀興(ふくおか・ひでおき)

早稲田大学理工学術院総合研究所教授。東京大学医学部卒業後、東京大学助手(医学部産婦人科学教室)、香川医科大学助手、講師、米国ワシントン大学医学部薬理学教室 Research AssociateRockefeller 財団生殖生理学特別研究生、東京大学大学院助教授を経て、平成19年より早稲田大学胎生期エピジェネティック制御研究所客員教授。平成23年より同大学総合研究機構研究院教授、平成27年より現職。厚生労働省の第6次、第7次「栄養所要量」、「妊婦のための食生活指針」策定委員等なども歴任、日本の成人病胎児発症説研究の第一人者として、妊娠中や思春期の食の問題に取り組む。『胎内で成人病は始まっている』(デイヴィッド・バーカー著)を監修・解説。日本DOHaD 研究会代表幹事。米国内分泌学会会員,日本内分泌学代議員、日本母性衛生学会監事、評議員(日本骨代謝学会、日本骨粗鬆症財団、日本妊娠糖尿病学会、日本性差医学研究会、日本臨床栄養学会、日本産婦人科学会東京地方部会 他)、認定臨床栄養学術師(日本臨床栄養学会)、 産婦人科専門医。著作は『災害時の栄養・食糧問題』(建帛社)、『ビタミン・ミネラルの科学』(朝倉書店)『子供の心身の危機をどう救うか』(ナップ社)『臨床栄養医学』(南山堂)『SGA性低身長症のマネジメント』(メディカルレビュー社)『NHKスペシャル 病の起源2』(NHK出版)など多数。

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