イギリスのゲーム会社が、面白いスマホ向けゲームを開発したという。ゲーマーはウイルスになって人類を攻撃するのだ。あなたが、ウイルスや病原菌だったら、どうするだろう? ワクチンや抗生物質でやられっぱなしで絶滅を迎えるだろうか? ウイルスも病原菌も体のしくみは人間よりずっと単純なので、ひょいひょいと構造を変えることができる。当然、人類が繰り出すワクチンや抗生物質が効かないように構造を変化させるだろう。
現実世界で、インフルエンザウイルスがたびたび変異し、毎年のように新型が発生しているのは、みなさんご承知のとおり。そして、なんと魔法の薬であった抗生物質に対しても、効かないように構造を変えた細菌がどんどんと出現し、「薬剤耐性菌」と呼ばれているのだ。
イギリスでは、キャメロン首相が立ち上げた調査チームが、このまま手を打たなければ、2050年には耐性菌による年間死亡者は1000万人にものぼると予測した。再び人類は、感染症の脅威に怯えなければならないのかもしれない。
ちなみに、マラリアの原虫は、ハマダラ蚊の中に生息している。体内に原虫を持った蚊に刺された人間がマラリアになるのだ。そこで、マラリア多発地帯では、ハマダラ蚊が活動する夜間に、まず殺虫剤を散布しさらに蚊帳の中で寝るという対策がとられてきた。ところが、最近、昼間活動するハマダラ蚊が増えているという。ハマダラ蚊も血が吸えないと生きていけないから昼型に変わったのだ。
生き物(ウイルスは生き物もどきだが)が、刻々と変化する環境の中で、生き残るために発揮する適応力はなんとすごいのだろう。
人類と病原菌との戦いは、20世紀には人類が優位になりかけたが、その後、菌が反撃に出た。戦いはまだまだ続く。
(文=編集部)