牛だけでなく豚の生レバーも禁止!? その背景にある意外な感染症とは...

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E型肝炎に感染する危険がある豚の生レバー

●牛だけでなく豚の生レバーも禁止!?

かつては焼肉屋などに行くと定番のメニューだった牛の生レバーを使ったレバ刺し。食品衛生法改正により、2012年7月以降飲食店での提供が禁止されたことは記憶に新しい。

 その陰で、一部の飲食店では代用として豚の生レバーをレバ刺しとして提供しているという。しかし、これも近く提供が禁止される見通しだ。厚生労働省の乳肉水産食品部会の専門家調査会が2014年6月に豚の生レバーなどの提供を禁止すべきとする報告書を公表したからだ。というのも、豚レバーの生食ではウイルス性の感染症であるE型肝炎に感染する危険があるからである。

●E型肝炎患者は10年前の2倍以上

 2013年に日本国内で報告されたE型肝炎患者は126例。この数字は10年前の2倍以上で、患者数増加の背景の一つが検査態勢の変化だ。これまでもE型肝炎の検査法あったものの医療保険が適用されておらず、2011年になってようやく検査法の一つが医療保険適応となった。そのためこれ以降は、E型肝炎そのものが発見されやすくなった。

 ただ専門家の多くは、この検査法の医療保険適応効果を割り引いても感染者数そのものが増えているとの見解を示している。その原因が、前述の豚レバーやジビエとも称される野生の猪や鹿などの肉の生食、あるいは加熱不十分なまま食べるなど、食の多様化が大きな影響を及ぼしていると考えている。

 とりわけ豚に関しては、過去に国内の養豚場で3000頭あまりを検査した結果から、80%以上の豚からE型肝炎の抗体が見つかっているほど。抗体があることは、これらの豚が一度、E型肝炎ウイルスに感染した証拠。もちろん抗体があるということは、感染した豚でE型肝炎が治癒したことも意味するが、だからといって油断は禁物だ。というのも、E型肝炎ウイルスが主に増殖するのは豚の肝臓と腸管であり、豚の血液中にE型肝炎ウイルスに対する抗体がある場合でも、肝臓ではまだ少量のウイルスが残っている可能性はある。豚レバーの生食がいかに危険かは、このことからも明らかだ。

 また、一部では海中に生息する二枚貝からの感染も報告されている。これは前述のようなE型肝炎に感染した哺乳類などの糞便が川に入り、そのまま海洋まで到達して二枚貝の中に蓄積されるためだ。哺乳類と違って二枚貝の中ではウイルスの抗体ができることはない。

●ワクチンはおろか治療薬もない

 一方、E型肝炎は比較的新しい病気であるため、医師がE型肝炎を疑うことなく診断に至っていない事例も十分にありえる。このため専門家の間では「実際の感染者は報告の10倍以上」との意見も珍しくない。

 E型肝炎はウイルスに感染して平均6週間の潜伏期間を経ると、発熱、黄疸、食欲不振、肝臓の腫れなどの症状が発現し、豚と同じくヒトでも一過性の症状後に治癒するのが一般的。B型、C型肝炎などの場合、原因となるウイルスの感染が慢性化し、最終的に肝臓がんに進展することがあるが、E型肝炎ではそうした危険はない。だが、E型肝炎も含むウイルス性肝炎では、一部で高度肝機能障害まで至る「劇症化」の恐れもあり、最悪は死亡する危険性もある。

 現在、医療機関を受診したE型肝炎患者の劇症化率は10%以上とかなり高い。中でもリスクの高いのは生活習慣病などの罹患者、肝機能が低下している高齢者といわれる。また、東南アジアなどではE型肝炎にかかった妊婦で約20%と高い死亡率が報告されている。日本のE型肝炎は、東南アジアで流行するものと遺伝子のタイプが異なるため、それほど危険とは言えないが、一定以上の注意は必要である。

 E型肝炎については既に中国でワクチンが開発され、一定程度の予防効果が認められており、日本国内でもワクチンの研究開発は始まっている。だが、現時点ではワクチンはおろか治療薬もない。日本製のワクチン開発が成功するまでは「生や十分に加熱しない肉や二枚貝を食べない」というやや消極的な自己防衛法しかないことは誰もが知っておいていいことである。

 それでもなお生豚レバ刺しを食べたいという人には、後は自己責任でと言うより他にない。

(文=編集部)