エボラ治療の希望となるか? 病原菌を磁石で除去する「バイオ脾臓」が開発

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anytka / PIXTA(ピクスタ)

 西アフリカ諸国で未だ猛威を振るうエボラ出血熱----。全世界で感染者は11113人、死者は5177人にのぼる(11月9日)。

 在庫は限られているもののカナダの製薬会社が治験薬の投入を決め、WHOが来年始めに実験中のワクチンの小規模な投与を始めるという報道も出てはいるが、すべてが後手後手で、もどかしい。どうも焼け石に水の印象だ。

 そんな中、英医学誌「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」に発表されたある研究論文が注目を浴びている。その論文よると、「磁石を使って血液から細菌や毒素を取り除く装置を開発した」というのだ。今はラット実験の段階で人間での試験は行われていないが、論文を発表した米・ハーバード大学などの研究チームは、「この体外装置を使えば、将来的にはエボラウイルスなどの病原体を血液から取り除ける可能性がある」と期待を寄せている。

●多くの難病治療に役立つ可能性がある

 

 血液中の異物を取り除く脾臓に似た働きをすることから、「バイオ脾臓」とも呼ばれるこの装置には、「マンノース結合レクチン(MBL)」という人間の血清タンパク質でコーティングされた磁性微粒子(ナノビーズ)が使われている。

 病原体や毒素がMBLと結合する性質があることを利用し、磁気を帯びているMBLを病原体や毒素とともに磁力で「引き抜く」ことで、血液中から除去するという仕組みだ。その後、浄化された血液は再び循環系に戻されるという。

 もともとこの「バイオ脾臓」は、敗血症(血液の感染症)を治療するために開発されたもの。敗血症の患者数は世界で毎年1,800万人、死亡率は30~50%にも上る。敗血症の病原菌は抗生物質に耐性がある場合が多く、体内で速やかに拡散してしまうため、この方法で取り除くのが有効なのだ。

 論文の共同執筆者の一人であるハーバード大のドナルド・イングバー氏は、人間に対する安全性が示されれば「このバイオ脾臓で患者を治療できるようになる可能性がある。患者の血液を物理的に浄化するので、多くの生きた病原菌だけでなく、死んだ病原菌の断片や毒素なども血液中から速やかに除去できる」と語る。

 また、MBLはヒト免疫不全ウイルス(HIV)や、さらにはエボラウイルスにも結合することが知られている。「エボラ出血熱患者の治療にも役立つ可能性がある。エボラ出血熱が最も高い伝染性とウイルス血症を示す段階にあっても、この装置で患者を治療し、血液中のウイルスを減らすことができるかもしれない」と補足している。

 この論文によると、黄色ブドウ球菌や大腸菌などに感染中の生きたラットを使った実験でも、この「バイオ脾臓」によって90%に上る細菌を血液中から取り除けた。また、人間の血液を用いた実験でも同様に多種の細菌類や毒素が除去できることが確認されている。 

 血液から物理的に病原菌や毒素を取り除く治療であれば、薬の副作用の心配もなく、患者への負担も軽くすむかもしれない。エボラ出血熱のような風土病は薬の開発が後手になりがちだが、同じ原理でさまざまな病原菌に対応できるのなら、そんな状況も改善できるだろう。今後も研究が大いに進み、「バイオ脾臓」が一日でも早く実用化されて欲しいと願うばかりだ。

(文=編集部)

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