連載第11回 いつかは自分も……他人事ではない“男の介護”

5人に1人が「ケアラー」に! 家族による無償のサポートはもはや限界

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
carersjapan.jpg

「介護を必要としている人も介護者も、ともに自分の人生の主人公になれる共生の社会をつくる」ことを目的に結成された日本ケアラー連盟(同ホームペジより

 あなたは「ケアラー」という言葉をご存知だろうか。一般社団法人日本ケアラー連盟では、ケアラーを「家族等無償の介護者」として以下のように定義している。

◎病気の家族を看病し、気にかけている
◎高齢者や障害のある家族をケアしている
◎遠方に住む親を気にかけている
◎ひきこもりや不登校の家族をケアしている
◎近所のお年寄りの手助けをしている
◎依存症などの問題をもつ家族を抱えている
◎障害のある子どもを育てている

 つまりケアラーとは、高齢者の介護だけではなく、看病・療育・世話・こころや体に不調のある家族への気づかいなど、ケアの必要な家族や近親者、友人、知人などを無償でケアする人のことをいう。インフォーマルケアの担い手だ。

 日本ケアラー連盟は2010年に「介護を必要としている人も介護者も、ともに自分の人生の主人公になれる共生の社会をつくる」ことを宣言して結成されただが、同年に厚労省の補助金を得てケアラーの出現率を把握するための大規模な調査を行っている。

 北海道栗山町全世帯、東京都杉並区高円寺地区、新潟県南魚沼市、静岡県静岡市葵区、京都市山科区音羽川学区の5地域の全世帯を対象として、この国のケアラーの出現率を推計しようという調査だ。この5地域2万1641世帯にアンケート用紙を配布し、1万663世帯からの回答を得て回収率はおよそ5割に達した。

 そこでは家族の「介護」「看病」「療育」「世話」をしている人は、なんと5人に1人という結果となった。向う三軒両隣のうち一軒はケアラーという実態だ。「気づかい」のみを担っている人も含めると4人に1人以上という高い比率を示した。

誰もがケアラーになる可能性がある

 

 先の調査では、2075人(全体の19.5%)のケアラーのうち、女性が3分の2(男性3分の1)を占め、13人に1人が育児と介護の両方をしていた。2人に1人強が「介護」、4人に1人が「看病」、5人に4人が「世話」、7人に5人が「気づかい」。

 不満や戸惑い、不自由さを感じながら家族のケアをしているケアラーも多く、7人に1人はかなりの負担感を感じており、5人に1人が孤立感を感じながらのケアとなっている。
 
 また、いまケアに従事していない人も決して無関心ではなく、そのうちの85%の人が「ケア/ケアラー」としての将来に不安を抱えながら暮らしていることがわかった。

 日本ケアラー連盟は、こうした実態を踏まえて、障がいや病気、世代、性別を超えたケアラーの支援を実現するため根本的な仕組みとして「介護者支援の推進に関する法律案(仮称)」政策大綱(2012年6月修正版)を発表し、その実現に向けた活動を始めている。一日も早く立法府での議論が始まることを願っている。
 
 家族みんなが一つ屋根の下で平和に暮らしていた時代はとうに去った。不安を抱えながらも1人で介護「して」「されて」暮らすのが、一握りの市民の問題ではなくなった。男性介護者だけの問題ではなく、誰にも避けがたい課題になっているにもかかわらず、この社会の制度設計は未だこの新しい生活実態に対応し得ていないのだ。


tsudome.jpg

津止正敏(つどめ・まさとし)
立命館大学産業社会学部教授。1953年鹿児島県生まれ。立命館大学大学院社会学研究科修士課程修了。京都市社会福祉協議会に20年勤務(地域副支部長・ボランティア情報センター歴任)後、2001年より現職。専門は地域福祉論。「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」事務局長。著書『ケアメンを生きる--男性介護者100万人へのエール--』、主編著『男性介護者白書--家族介護者支援への提言--』『ボランティアの臨床社会学--あいまいさに潜む「未来」--』などがある。
連載「いつかは自分も......他人事ではない"男の介護"」バックナンバー

津止正敏(つどめ・まさとし)

立命館大学産業社会学部教授。1953年鹿児島県生まれ。立命館大学大学院社会学研究科修士課程修了。京都市社会福祉協議会に20年勤務(地域副支部長・ボランティア情報センター歴任)後、2001年より現職。専門は地域福祉論。「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」事務局長。著書『ケアメンを生きる--男性介護者100万人へのエール--』、主編著『男性介護者白書--家族介護者支援への提言--』、『ボランティアの臨床社会学--あいまいさに潜む「未来」--』などがある。

津止正敏の記事一覧

津止正敏
まさか20〜30代で「更年期障害」の症状が! まずは卵巣機能低下や自律神経失調症を疑え 
インタビュー「若年性更年期障害」第1回 ポートサイド女性総合クリニック「ビバリータ」院長・清水なほみ医師

更年期障害といえば40代後半から50代の病気と思われがちだが、20〜30代で同様の症状が現れる患者も増えている。その症状と原因、治療、予防について、ポートサイド女性総合クリニック「ビバリータ」院長・清水なほみ医師に訊いた。