連載第2回 遺伝子検査は本当に未来を幸福にするのか?

国内およそ700の企業・機関がしのぎを削る遺伝子検査ビジネス

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出典:独立行政法人理化学研究所

 世界各国の企業がしのぎを削る「遺伝子検査ビジネス」。2013年の経済産業省の調査によると、日本国内ではおよそ700の企業・機関(そのうちの約600は医療機関)が、DTC 遺伝子検査サービス事業を立ち上げている。

 DTCはDirect to Consumer (消費者向け)の略称。つまりDTC遺伝子検査とは、DNA配列の分析を行い、病気のかかりやすさや体質などの検査結果を消費者に直接提供する遺伝子解析サービスのことである。

 採血しなくても毛髪、爪、頬粘膜などを送るだけで検査できる手軽さも加わり、生活習慣病への関心の高まりや、ダイエットやメタボのブームの波にも乗って、やや過熱気味の様相も呈している。それだけに、医師の診断を受けて行う医療上の遺伝子検査との違いを、十分に理解して利用しているのかどうかが、気になるところだ。

体質、遺伝病、個人識別情報などを調べる遺伝子検査

 まず、遺伝子検査や遺伝子とは何かを知っておこう。

 病気にかかったりケガをすれば、病院や診療所を受診する。医師が問診や聴診をしたり、体温・脈拍・血圧・呼吸数などのバイタルサインを測ったり、採血や検尿をしたり、レントゲンを撮ったり、さまざまな診察や診断を受ける。このように医療機関で患者が受診する検査を総称して「臨床検査」と呼ぶ。

 臨床検査は、患者から採取した血液や尿、便、細胞などを調べる検体検査と、心電図や脳波などを調べる生理機能(生体)検査がある。遺伝子の異常などを調べる遺伝子検査は、検体検査のひとつだ。

 日本医学会は遺伝子検査を以下の3つに分類している(一部、表現を改編して引用)。

①病原体遺伝子検査(病原体核酸検査)
 ヒトに感染症を引き起こす外来性の病原体(ウイルス、細菌などの微生物)の核酸(DNAまたはRNA)を検出・解析する検査。

②体細胞遺伝子検査
 がん細胞特有の遺伝子の構造異常などを検出する遺伝子検査や遺伝子発現解析など、疾患病変部・組織に限定し、病状とともに変化する一時的な遺伝子情報を明らかにする検査。

③遺伝学的検査
 単一遺伝子疾患、多因子疾患、薬物などの効果・副作用・代謝、個人識別に関する遺伝学的検査、つまり、生涯変化しないゲノムやミトコンドリアの中にある遺伝学的情報を明らかにする検査。

 簡単にいえば、細菌やウィルスの種類や量を調べたり、がんや白血病などDNAの変化を調べたり、生まれながらの体質、遺伝病、個人を識別する情報などを調べるのが、いわゆる医療上の遺伝子検査の役割だ。

 遺伝子検査は、コンプライアンス(法的遵守)の面から見ると、個人情報保護法をはじめ、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(3省指針)」、社団法人日本衛生検査所協会の「ヒト遺伝子検査受託に関する倫理指針」、遺伝子医学関連学会の「遺伝学的検査に関するガイドライン」に則って実施されている。

 次回は、遺伝子や遺伝子検査法ついての知識を深めよう。


佐藤博(さとうひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。
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