「海外でコロナ感染者になると日本にいつ帰れるのか」問題の実態

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留学先での大きな悩み

 さて、そのような学問の風が吹くエディンバラで学ばせていただいている私ですが、最近1つ悩みがあります。それが、“万が一コロナに感染してしまった場合に、日本にいつ帰れるのか問題”です。前回、エディンバラにおけるコロナ対策の取り組みを紹介させていただきましたが、検査体制が充実しているものの、私たち留学生にとって、検査さえできれば安心できる、という単純な問題ではないということが分かってきました。

 というのも、1度検査で陽性反応が出てしまった場合、国民保健サービス(NHS)からは、回復後90日間はPCR検査を行わないように指導されます。というのも、PCR検査は非常に感度が高く、コロナ感染から回復していても90日間は陽性反応が出てしまう場合があるためです。そのような人が海外への出張や留学を考える場合の措置として、回復証明書(Recovery Certificate)がNHSのサイトのCOVID Passのページを通じて入手することができます。この回復証明書は隔離終了後180日間有効で、例えばオランダやオーストリア、アメリカといった欧米各国は、この証明書による入国を許可しています。外務省のサイトでは「感染履歴証明書」や「治癒証明書」と訳されていることもありますが、その対応が明確です。

患者を突き放し、自己責任論に持ち込む日本の対応!?

 しかしながら、日本への入国に関する情報を厚労省のサイト( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00248.html )を確認してみると、日本人を含むすべての入国者は出国前72時間以内の検査証明書の検査結果の提出が義務付けられており、有効な検査証明書が提示できない場合には検疫法に基づき日本への入国が拒否されるとの記述があります。しかしながら、このページには、真にやむを得ない場合は在外公館に問い合わせるようにと記述があるものの、どのような対応を取っていただけるのかは不透明で、また、回復証明書に関する記述もなく、万が一出張先・留学先でコロナに感染してしまった場合、検査結果が陰性となるまでの約3か月間、現地に留まらなければいけないということなのかと、心がざわつかせられてしまいます。

 考えてみると、日本の対応は、上記のページの“真にやむを得ない場合”や、緊急事態宣言時の“不要不急”という言葉に代表されるように、一貫してどこかコロナ患者を突き放し、自己責任論に持ち込んでいるように感じます。また、最近始まったビジネス目的の入国者に対する3日間の隔離短縮措置も、なぜビジネス目的の入国者だけに限定する必要があるのか、その根拠はどこにあるのか極めて謎です。海外諸国の顔色を窺っているにすぎず、本質的な対応とは言い難いのではないでしょうか。

 最近では日本のコロナ対策への取り組みが徐々に見直されつつあり、感染状況はだいぶ落ち着いてきているとニュースでよく目にします。しかし、感染してしまった人を取り残し、彼らがどのような対応を求めているのかという声が届かないのであれば、それは大きな問題であり、早急に改善すべきだと私は思います。
(文=金田侑大)

金田侑大
スイスはフラウエンフェルト出身。母は日本人、父はドイツ人というバックグラウンドで育つ。日本に移り、愛知県の私立滝中学校、私立東海高等学校を経て、現在は北海道大学医学部医学科4年に在学中。今年の9月よりイギリスのエディンバラ大学に留学し、医療政策や国際保健といった分野を学んでいる。3日あれば旅行に出かけるような北海道観光アンバサダーでしたが、エディンバラではインドア生活を大満喫中。

※2021年11月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp/mt/?p=10658 より一部抜粋

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