ペットのために東洋医学を積極的に導入 前編

愛犬・愛猫のために東洋医学を積極的に導入 注目されるペット中医学とは?

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複雑な東洋医学のマニュアル化を目指す

 ペットに対する東洋医学的なアプローチへの追い風となったのが、2000年ごろの世界的なペットブームだった。雑種より血統書付きの生体販売が一般化し、ペットはタダでもらえるものではなく購入するのが普通になってきた。残飯ではなく健康に気を配ったペットフードが爆発的に売れ始めたのもこの時期からだ。

 一方、1976年から人の慢性病などに漢方薬製剤が保険適用になり 一般的に漢方薬の認知度も上がり、獣医師の間にも漢方や東洋医学に関心を持つ人が増えていた。

「私は立ち上がったばかりのペットの東洋医学の研究会に加入しながら獣医師に向けて鍼灸講座というクラスを持ちました。東洋医学に興味のある方がとても多くいましたが、どうすればいいのか全くわからない。実は当時も今も獣医学の教育の中で、一般的なカリキュラムとしての東洋医学の講座が極めて少ない状況なのです」

 石野院長が日々の診療で使うのは漢方薬、鍼灸、推拿などの治療が主で、その診断には「四診(ししん)」といって、獣医師の目や耳、鼻などをフル活用させ、動物の体に現れるサインを東洋医学的に判断する方法が使われる。

 四診は、動きや表情といった様子を観察する望診(ぼうしん)、体臭や呼吸臭などのニオイを嗅ぐことで体調をチェックする聞診(ぶんしん)、太ももの内側で脈拍を測る脈診とおなかの張りや硬さから病気を診断する腹診からなる切診(せっしん)、飼い主さんから普段の生活習慣や食事を具体的に聞く問診(もんしん)の四つ。

「この四診は豊富な経験と五感をフルに活用する診断で、複雑な東洋医学の考え方を理解していないと難しい。西洋医学だけを勉強してきた獣医師に東洋医学の基礎を理解してもらうのが非常に大変でした。肝と肝臓の違いを説明するだけで一苦労。東洋医学の肝は、気や血を最適な量でスムーズに巡らせることで体全体の機能を調節する働き。こうした概念自体が西洋医学と大きく異なるのです。だから みんなが同じ考えでできるマニュアル化が必要だと考えました。

 例えば猫エイズ(猫後天性免疫不全症候群)という病気がありますが、この病気に使うツボや漢方があるわけではないのです。四診で証(体質、病因など)を決めなければならない。

 ですから病名弁証(診断と証の分類)をする。つまり具体的な症状を分析して複数の証に分析し、初期段階ならこう、悪化したらこういう証というようにマニュアル化していこうと考えました」と石野院長は説明する。

膨大な診療データから確立したペットの肉球診断法

 様々な疾患の病名弁証を繰り返しながら、石野院長が確立した独自の診断法もある。
「マニュアル化の大きな試みが肉球の弁証でした。病院に来るとペットは緊張して脈は非常に速くなるいわゆる数脈(さくみゃく)の状態。しかも頻繁に体を舐めて身つくろいをする犬や猫では舌苔を見られないため舌診もできない。そこでたどり着いたのが肉球でした。肉球は犬でも猫でも汗腺が発達し毛細血管がたくさんあるため体調を見るにはうってつけです。膨大な肉球の診療したデータを蓄積し分析するとおおよそ8つのタイプに分かれることがわかりました」(石野院長)

 その肉球診断も、豊富な画像症例を掲載した2冊の単行本になって少しずつ広がりを見せているという。

 2013年に日本ペット中医学研究会(JPCM)の初代会長に就任するなど積極的な活動で、現在まで約400の加盟病院でペット中医学を導入した診療が行われているという。そのほかにもペット用のサプリメントの開発など活動は幅広い。

次回はさらに詳細なペット中医学の実際についてお話を伺う。(続)
(文=編集部)

愛犬・愛猫のために東洋医学を積極的に導入  注目されるペット中医学とは?の画像2

石野孝(いしの・たかし)
かまくらげんき動物病院院長。
最新の西洋医学と伝統的な東洋医学を結合し、動物にやさしい治療を実践。麻布大学大学院獣医学研究科修士課程を修了。中国内モンゴル農業大学にて中国伝統獣医学(鍼灸、中薬学)を専攻し、日本人獣医師として初めて中国伝統獣医学を修める。
「中西結合獣医学(ちゅうせいけつごうじゅういがく)」の権威として長きにわたり、最新の西洋医学と伝統的な東洋医学を融合させた、動物にやさしい治療を実践している。
国際中獣医学院日本校校長、一般社団法人日本ペットマッサージ協会理事長なども兼任する。

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