関係学会との連携で問題は解決するのか
11月6日の衆議院厚生労働委員会で、血液クレンジングが取り上げられた。厚生労働省は、その効果やリスクについて現時点では確認できていないとした上で、「関係学会と連携しながら情報収集を進めたい」との考えを示した。
関係学会が、どの学会のことを示すかは不明だが、主にこの治療法を推奨する日本酸化療法医学会では、血液クレンジング療法について非常に詳しくその機序や論文等を掲載し、エビデンスがあると主張している。この学会の説明だけを読んで、一般人がこの療法の是非を判断することは不可能だろう。しかも、血液クレンジングを実施する医療機関の検索ページまであり、全国165施設(12月2日現在)あると紹介されている。つまり、少数の特殊で実験的なクリニックのみで実施されている治療方法ではないのだ。
医師には裁量権というものがあり、提供できる医療行為の制限はない。だが、これだけの批判がある治療方法に関しては、そのエビデンスが妥当なものなのかきっちりとした説明責任を果たすべきだろう。そして医療界の多くが認め、可能であれば保険診療として提供できるように努力されるべきだろう。ましてや、血液クレンジングのように多くの医療機関で実施されている治療法であれば、なおさらのこと学会などの責任は大きい。
患者のために客観的な評価指針やガイドラインの整備が必要
あらゆる代替医療の有効性を徹底的に検証した大書『代替医療のトリック』(サイモン・シン&エツァート・エルンスト)でも、酸素療法に言及している。
「代替医療の酸素療法はどんなタイプのものも、信頼できる科学的根拠はないと言ってよい。したがって、潜在的な危険性のほうが、主張されている効果よりも大きいことは明らかだろう。結論は明白だ。酸素は、通常医療ではさまざまに利用されているが、代替医療における役割は、生物学的には考えにくい説にもとづいている。代替医療の酸素療法は有効性が示されていないばかりか、有害にもなりうる。この療法は受けないようにしよう」
代替療法、民間療法、自由診療には同様にエビデンスのないもの、曖昧なものが多い。したがって、当然のことながら積極的に推奨はされるべきではない。しかし、標準医療で効果がない患者や、エビデンスのない、あるいは低い治療方法でも「この治療方法はいいと思う」「受けてみたい」「自分には効果があるかもしれない」「できる治療はなんでも試してみたい」などと考えることまでは否定できない。ケースによっては、追い詰められている切実な場合も少なくないはずだ。
すべての保険外診療が否定されるべきではないだろうし、そのなかにも将来の標準治療になり得るものがあるかもしれない。そうであれば、なんらかの客観的な評価情報や基準が求められるべきではないのか。そろそろこの分野にもEBM(根拠に基づく医療)の網がけを本格的に始動させる時期に来ているのではないか。
(文=編集部)