日常的にマイクロプラスチックを摂取!?
つまり、人種や国境に関係なく、私たちは日常的にマイクロプラスチック片を摂取しているわけだ。
具体的には、飲料ボトルに用いられている「PET」ことポリエチレン・テレフタレートや、そのキャップに使われているポリプロピレンだ。あるいは、どこの家庭のキッチンでも見かけるだろう、プラスチック製の台所用品、食器、コンビニのレジ袋、冷蔵庫内の保存用容器類にもポリエチレンなどが含まれている。
研究主導者であるSchwabl氏によれば、今回の結果は「驚愕に値する」結果だったようだ。
「プラスチック製品は利便性が非常に高く、世界中で幅広く使われている。しかし、人類はプラスチックに代わる新素材を探すべき時期を迎えている。でき得るかぎりプラスチック製品を削減することが、自然環境や我々人間にとっても有益なのは明白だ」
同氏によれば、マイクロプラスチック片がヒトの体内に取り込まれる経路は、①包装材や容器類から食品に付着したもの、②環境汚染による食物連鎖で蓄積された海産物、の可能性が考えられる。だが明確な原因は、現時点では特定できていない。
マイクロプラスチックは血流、リンパ系、肝臓に達する可能性
一方、マイクロプラスチック片摂取の影響は、動物実験の結果、血流やリンパ系そして肝臓に達する可能性が示唆されている。しかし、「ヒトではまだ確認されていない」のが現状だ。
Schwabl氏らも「より大規模な取り組みで徹底検証し、ヒトの健康への影響について明らかにしていきたい意向だ」と、抱負を語っている。
斯界の専門家の一人で米国レノックス・ヒル病院(nyc)のArun Swaminath氏の見解はこうだ。「マイクロプラスチック片がヒトの腸に達した場合、腸管が傷害を受けたり、腸絨毛の形状に異常をもたらすであろう可能性は否めない」
世界経済フォーラム(ダボス会議)では「5兆個のプラスチック片が海中にある」と報告され、米国大洋大気庁(NOAA)によれば日本の面積の4倍強にも相当する「160万平方キロメートルものプラスチックごみ」の塊が太平洋上に漂っているのが現状らしい。
そんな洋上の深刻な情勢下、今年6月開催のG7(主要国首脳会議)においては海洋プラスチック廃棄物に関する憲章が採択された。にもかかわらず、わが国の姿勢は、トランプの米国に歩調を合わせて、この署名を「拒否」している。
今回の人体からマイクロプラスチックが発見された初の報告を受けて、日本や米国政府は態度をあらためるのだろうか。(文=編集部)