研磨剤のマイクロビーズは環境にも身体にも悪影響が!(shutterstock.com)
「変形しながらくだける顆粒で歯垢ごっそり! ツルツルの歯に」
大手ヘルスケアメーカーが製造販売する歯磨き粉のコピーである。歯と歯のすき間や歯の表面にある溝に顆粒(清掃剤)が届くことで、歯垢をかき出す効果が得られるのだという。
筆者も使用したことがあるが、微細なアワのようなつぶつぶが舌や歯茎にあたり、口の中全体がかすかにマッサージされているような気持ちよさがある。同じような顆粒は、肌の角質を除去するスクラブ洗顔剤やボディソープにも使われている。読者の中にも愛用している方がいることだろう。
この微細な顆粒の正体は「プラスチックマイクロビーズ」。略して「マイクロビーズ」と呼ばれている。直径が1ミリ以下という微細なプラスチックの粒子で、これが研磨剤となって歯垢や肌の角質をかき出すということらしい。
アメリカでは禁止環境汚染の元凶
微細なマイクロビーズは家庭の下水を通って川や湖、海に流れ出す。あまりに細かいため、下水処理施設のフィルターに引っかからないのだ。アメリカの環境団体「5GYRES」は、2013年4月16日付のブログで、以下のように指摘している。http://www.5gyres.org/blog/posts/2013/04/16/do_plastic_micro_beads_from_facial_scrubbers_escape_sewage_treatment
●洗顔剤には1つのチューブで35万粒も含まれている。
●アメリカ五大湖のエリー湖には1平方キロあたり60万粒という汚染を記録した地点がある。
そして同団体は「魚はこうしたマイクロビーズを餌と勘違いして食べ、それが蓄積すること、そしてその粒子の表面には殺虫剤など化学物質がなじみやすい」と警鐘を鳴らす。
また別の環境団体が調査の模様を記録した映像には、そのような魚を食べた後のクルーの口や、海でシュノーケリングをしたクルーの上半身に、微少のプラスチックの玉がついている様子が描かれている。撮影をした場所から、マイクロビーズの影響が太平洋にまで広がっていることがわかる。
マイクロビーズの環境への負荷の大きさから、アメリカでは規制の動きが広がっている。2014年の2月、ニューヨーク州政府はマイクロビーズを使った製品販売を禁止する法案を提出。カリフォルニア州などでも法整備が進んでいる。これを受け、ロレアルやジョンソンエンドジョンソン、P&G、ユニリーバといった世界的な大手メーカーは、今後、マイクロビーズを果物の種子などに変換していくつもりだという。
歯科医から健康被害に関する報告も
日本国内の歯科医からは、健康被害に関する報告が届いている。
タツキ歯科クリニック&エターナルのホームページには、インプラントの周りに付着したり、歯肉の中に入り込んでしまったりした歯の症例が写真付きで記されている(http://www.tatsuki-dc.com/topics/page12.html)。こうした現象について同クリニックの医師は、「このプラスチック・マイクロビーズが歯周ポケットやインプラント周りに残りやすく、歯肉に入り込んで溶けずに炎症を起こしてしまうことがあるという報告が多くあるのです」とコメントを添えている。
それだけではない。厚生労働省が2010年8月18日付けで発表した「スクラブ等の不溶性成分を含有する洗顔料の使用上の注意事項について(http://www.mynewsjapan.com/reports/2060)」という通知によると、「不溶性成分が異物として眼に入る可能性があること、眼表面を傷つけるおそれがある」としており、その中にはマイクロビーズも含まれるという。
歯磨き粉に入ったマイクロビーズ入りが、少しずつ歯茎にたまったり、飲み込んだり……。スクラブに関しては、うっかり目に入り、眼球を傷つけてしまう恐れがある。さらには、環境に負荷をかけるリスクが高い。外国では急速に禁止ムードが高まってきているが、今後、日本国内でも同様の措置を講じる必要がある。できれば、そのときを待たず、すぐに消費者の側から率先して使用を避けるべきだ。
(文=編集部)