男の潮吹きの主成分は膀胱尿
外尿道口から噴出された液体を原氏らが調べたところ、クレアチニン値(血中の尿素窒素)が55.9mg/dLを示し、主成分は膀胱尿と判明。被験者によると、外尿道口から液体が噴出している最中のオルガズムは「我慢した後に排尿した感覚」と「射精した感覚」が合体したような感覚だったという。
原氏は、男性の潮吹きのメカニズムをこう要約する。射精終了後も陰茎刺激を続けることにより、膀胱頸部は平坦化した状態を保ち、前立腺部尿道に膀胱尿が流入。その後、収縮と拡張を繰り返すことによって前立腺部尿道に空洞が生じ、前立腺が強く収縮し、外尿道口から尿が射出された。その後、膀胱頸部が開大して元の形状に戻った。これらの一連の現象は、緩く重ねた両の手のひらの間に水を入れ、両手を勢いよく閉じ、中の水を押し出す手を使った水鉄砲に近いと解説している。
つまり、「男性の潮吹きとは、射精後の継続的な陰茎刺激で主に前立腺の強力な収縮と拡張により生じる膀胱尿が噴出する現象だった」と、原氏は結論づけている。
潮吹きは性生活を豊かにするか
女性の潮吹き(Female ejaculation :女性の射精)はオルガズムの前または最中に手でGスポットを刺激されて尿道からスキーン腺液が排出する現象だ。
精緻な学術的研究や知見が少ないので、玉石混交の見解が交錯するのは否めない。ただ、潮吹きの前段階のオルガズムによって膣周辺が充血し、膣の周縁の血管が血漿から潮を分泌し、尿道の途中の前立腺の経路から潮を噴出すると推察できる。
潮の成分は何か。潮と尿を比較すると、潮のほうがPSA(前立腺特異抗原)、PAP(前立腺酸フォスファターゼ)、ブドウ糖の濃度が高く、クレアチニンの濃度が低い。尿中PSA濃度は、オルガズム後の尿のほうがオルガズム前の尿よりも高いとする研究がある(Belzer, EG.“Orgasmic expulsions of women: a review and heuristic inquiry”. Journal of Sex Research 17 (1): 1–13. doi:10.1080/00224498109551093.)。
女性の射精時に排出される量は2~3ml からカップ2杯(400ml)と個人差が大きい。女性の前立腺の大きさは約5mlの容積だが、性的に刺激されると女性の前立腺は腫大するため、1回の射精で排出される上限の量(カップ2杯・400ml)は膀胱に貯まる尿の量(350~600ml)とほぼ同じになる(the-clitoris.com female ejaculation)。
また、女性は尿路感染症の頻度が高く、性交渉による感染が起きることがあるが、潮吹きによって尿道が洗浄され、雑菌が洗い流されることから、潮吹きは尿路感染症の予防に役立つとするとの見解がある(Does female ejaculation serve an antimicrobial purpose? Medical Hypotheses 73 (6): 1069-71.(December 2009)。
さらに、女性の前立腺液は男性の前立腺液と同様に弱アルカリ性で、エネルギー源の果糖を含み、精子が生存しやすい環境をつくるため、精子の生存に役立つという見方がある。また、女性のオルガズムは妊娠確率を高くするという見方があるが、いずれも明確な科学的根拠は不明だ。
さて、男性も女性も潮吹きするが、その機序はいまだに不明な点が多い。ただ、潮吹きは異常ではなく、健康な男女がより豊かな性生活やオルガズムを楽しむために欠かせない生理機能かもしれない。
(文=編集部)