実際にあった急性カフェイン中毒の症例
●14歳女児がカフェイン製剤大量服用で自殺企図
沼津市立病院小児科の能登孝昇医師によると、患者(14歳女児)は市販薬として最も多く流通しているカフェイン製剤であるエスタロンモカ124錠(カフェイン12.4g相当:致死量は個人差にもよるが、5~50g)を服用して自殺企図。3時間後に嘔気、嘔吐、意識レベル低下を認め、同院に搬送された。内服した薬の空包を確認して、急性カフェイン中毒と診断された。
搬送時の同血中濃度は198μg/mL(生命に危険が及ぶのは80μg/mL)と非常に高濃度であった。幸いにも補液、呼吸循環機能の保持などを目的とした治療にて、一命をとりとめた。
後日、患者さんの告白によると、自殺方法をインターネットで検索してカフェイン製剤の服用による致死量を確認。市販カフェイン薬を複数回に分けて購入、家族に気付かれないように、薬剤を自分に鞄に隠し持っていた。その後、薬をヨーグルトに混ぜて一度に服用した。
入院後の治療が功を奏したため血中濃度も低下し、その後は精神科での治療を継続している。本来であればエスタロンモカは、15歳以下では服用禁忌となっているが、薬店で容易に入手可能であったこと、保護者の子供に対する監督が不十分であったことなどが、反省点として挙げられよう。今後も同様な小児のカフェイン中毒例の増加が懸念されるところである。
●20歳代のカフェイン製剤大量服用による症例
岩手医科大学救急・災害・総合医学講座救急医学分野の藤野靖久医師によると、26歳男性が眠気防止のためカフェイン製剤5.8g相当を飲んだところ、嘔気、嘔吐、悪寒,、意識レベル低下、発熱などを訴え、救急搬送された。カフェイン血中濃度は87μg/mLと致死量に達していたので、直ちに2度の血液透析を行った。その結果、治療後の血中濃度は11μg/mLと低下。その後、無事退院できた。
また同医師は、20歳男性が自殺目的でカフェイン製剤を10g相当飲んで、動悸、嘔吐、意識レベル低下などを訴えて救急搬送された例も紹介。同血中濃度は80μg/mLと高値であったため血液透析を施行。終了後同濃度は15μg/mLと改善した。その後、精神科転科となったと報告した。
カフェインが成分として含まれる総合感冒薬や眠気防止薬は、現在、薬店やインターネットを利用しての購入が容易に可能である。今後は、薬局薬剤師、医師会、中毒学会などによる規制措置が必要と思われる。また、国や厚生労働省による「濫用等の恐れのある医薬品」としての指定も必須であろうと思われる。
(文=横山隆)