学術展示か?見せ物か?今も世界各国で開催されている「人体の不思議展」の功罪を問う!

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標本にされた遺体は中国人? 法輪功学習者?

 2003年、新華社傘下の雑誌『瞭望東方週刊』は「中国は世界最大の人体標本の輸出国になった」と報道。2006年、『ニューヨークタイムズ』は、「中国で死体売買の関係者と死体の出所を確定するのは難しい。主催者も標本の供給者を明かさない。公安当局の説明も二転三転、死体を提供したとされる南京大学も関与を否認。死体は精神病患者や処刑された囚人の可能性がある」と報道している。

 人体の出所が取り沙汰されると、中国のエージェントのプレミア・エキシビション社は「中国警察当局が提供した中国の公民や住民の遺体だ。警察当局は、中国の刑務所から人体を入手している」と公式サイトで免責声明文を発表。中国人権問題に詳しいカナダの弁護士デービッド・マタス氏は「2017年にプラハで開かれた人体標本展の死体のほとんどが公安、警察当局から供給された中国人の遺体だ」と解明している。

 『大紀元』などの中国国内外の情報によると、人体標本は、共産党当局が厳しく弾圧・連行した法輪功学習者が多いと強調。2004年にドイツ紙『シュピーゲル』は「工場周辺に少なくとも3つの刑務所や強制収容所があり、政治犯や法輪功学習者が拘留されていた」と詳報している。

法輪功とは?

 法輪功は、1990年代におよそ7000万人が修練していた伝統気功法だ。中国体育当局によれば、その精神修養法が共産党のイデオロギーに抵触するため、1999年当時の江沢民主席が弾圧を決定。以後、共産党当局は自宅、陳情所、職場などあらゆる場所で法輪功学習者を連行し、弾圧を加えた。

 2017年8月、国際人権NGOフリーダムハウスは「法輪功学習者は、チベット族、ウイグル族、キリスト教徒よりも過酷かつ凄惨な迫害を受けた」と主張。法輪功迫害問題を10年間追い続けてきたマタス弁護士によると、収容されている法輪功学習者は、家族や友人に連帯責任が及ぶのを恐れ、身元を決して明かさない。現在も多くの身元不明の学習者が中国の収容所に拘留されている」と推測している。

 法輪功迫害を独自調査する国際組織「追査国際(WOIPFG)」の代表で、米ハーバード大医学研究員でもある汪志遠氏は「なぜ臨月近い妊婦の遺体を家族ではなく、公安当局が管理できたのか? なぜ身元を捜索しないのか?」と厳しく批判している。

死体加工工場の内実を赤裸々に暴露

 2014年11月の新唐人テレビは、大連の死体加工工場に勤務していた中国朝鮮族の男性(李さん)の告白を報道。李さんは「従業員は全員、医学部の卒業生で給与は高い。私の仕事は肝臓部分の処理。大きな水槽に死体をホルマリン漬けにした後、脂肪と水分を抜き、化学薬品をかける。仕上がりはもう人間ではない、プラスチックのようだ。妊婦もいた」などと内実を赤裸々に暴露した。

 2013年、調査ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏は「中国当局、軍、警察、公安、医療機関、エージェントなどが組織ぐるみで法輪功学習者などから臓器を強制的に奪取した。臓器狩りによって数万人以上が殺害された恐れがある。殺害された法輪功学習者の家族からDNAサンプルを採取し、標本のDNAと照合すれば、法輪功学習者が死体標本に利用されたか否かの嫌疑が晴れ、疑惑も憶測も全て解明できるかもしれない」と語り、ハーゲンス博士にDNA鑑定を強く要請。しかし、ハーゲンス博士が応じる見込みはない。

 ちなみに、2011年にドイツ紙『ビルト』は「ハーゲンス博士が自らパーキンソン病の末期にある事実を明かした。死後は遺体を標本展示するらしい」とリークしている。

 累々たる屍(しかばね)を世界中に公然と晒しながら順風満帆、七つの海を巡航し続ける「人体の不思議展 BODY WORLDS」。闇から闇へ。「死体ビジネス」の犠牲になった人々が誰なのか? その真相は、庸として掴めない。

 今こそ、「死体ビジネス」の功罪を問うべき潮時だ。「学術展示か、見せ物か?」「健康の啓蒙か、人権の蹂躙か?」「生命の礼賛か、人道に反する蛮行か?」と。
(文=編集部)

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