京大がiPS細胞によるパーキンソン病の再生医療の治験をスタート

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網膜へ、脊髄へ、心臓へ。ますます広がるiPS再生医療のフロンティア

 このようなiPS細胞による再生医療の動向は目まぐるしい。

 理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーと神戸市立医療センター中央市民病院は、他人iPS細胞から育てた網膜の細胞を目の難病患者に移植する臨床研究で網膜がむくむ合併症が発生したと発表した(日経新聞:2018年1月16日)

 合併症が発生したのは、2017年6月に同病院でiPS細胞から育てた網膜細胞の移植手術を受けた、70代の男性患者。新たに膜ができ、4カ月後に「網膜浮腫」と呼ぶ網膜がむくむ症状を発症した。iPS細胞を用いた再生医療の臨床研究で、手術が必要な合併症が起きたのは初めて。ただ、患者は重症でなく、今後も臨床研究を継続するとしている。

 時間は少し遡るが、慶應義塾大学医学部生理学教室の岡野栄之教授らの研究チームが取り組んでいる脊髄損傷の新しい治療薬の治験がある。この治験は、遺伝子組み換え技術によって作成したHGF(肝細胞増殖因子)というタンパク質を脊髄損傷した患部に注入し、炎症を食い止める。国内の複数の医療機関と合同で行い、安全性と有効性を確認しているところだ。iPS細胞から作成した神経幹細胞の移植を脳梗塞の後遺症の患者に適用する臨床研究も進行している(朝日新聞:2014年6月9日)。

 さらに、大阪大学の澤芳樹教授らの研究チームが取り組んでいるiPS細胞による世界初の心臓病(心不全)の臨床研究がある。臨床研究の対象は、血管が詰まり、心臓の筋肉(心筋)に血液が届きにくくなる「虚血性心筋症」によって心不全に陥った重症患者3人。京都大学iPS細胞研究所が備蓄している他人のiPS細胞使い、心筋細胞に育てた後、厚さ約0.1ミリメートルのシート状にし、心臓に貼る。シートから栄養を含むタンパク質が分泌され、血管を成長させて心臓の回復を促す仕組みだ。

 心不全は心臓の機能が低下し、息切れしたり疲れやすくなる疾患で、日本人の死因の第2位。重症なら補助の人工心臓や心臓移植で置き換えるが、人工心臓は合併症のリスクがあり、心臓移植は提供者(ドナー)の数が少なく、しかも心臓の治療は大量の細胞が必要になるなどの難題が立ちはだかる。

 厚労省の専門部会は、5月16日に澤教授らが厚労省に申請していた臨床研究計画書を条件付き(再生医療製品の整備)で了承。阪大は2018年度中に患者への治療をスタートし、1年かけて安全性や効果を調べる予定だ。心不全へのiPS医療は新たなフェーズに突入する。

 iPS細胞による移植と創薬がもたらすイノベーション! 近未来にどのような衝撃のブレークスルーが待ち受けるのだろう。
(文=編集部)

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