本当に怖いネット依存症〜10代で心肺機能は50代、歩きスマホで事故死……

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ネット依存症がうつや発達障害と関連

 ネット依存症には、「スマホ依存」や「SNS依存」「ゲーム障害(ゲーム依存、ネトゲ依存)」も含まれる。スマホの普及で、手軽にどこでもネットを使えるようになったこと、子どももスマホを持つようになったことが、ネット依存症の患者を増やしているようだ。IT(情報技術)の進歩でもたらされた闇ともいえる。

 欧米や韓国などの研究で、うつ病といった気分障害や、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、自閉症スペクトラムなどはネット依存症と関連性があるという報告がある。

○うつ病
気分の持続的な落ち込みを主体とした精神的・肉体的症状が現れる。

○ADHD
不注意・衝動性・多動性が特徴。感情が爆発しやすく、社会的な活動や学業に支障を来す。

○自閉症スペクトラム
社会性やコミュニケーション能力の障害。

 上記の障害を持っていることで、ネット依存症が起こっている可能性もあるだろう。コミュニケーションを取るのが苦手で、人と接する際に感情的なトラブルを起こしたり、強い不安や緊張を抱いたりすることから、直接人と向き合わずに済むオンラインゲームやSNSにのめり込んでしまうのだ。

 ネット依存症は、精神面だけでなく肉体もむしばんでいく。ネットを1日中使い続けているために、家の中に閉じこもってしまう。当然、運動量が激減し、10代でも心肺機能は30~50代レベルにまで落ちてしまうのだ。

「そのうち飽きる」というのは大きな誤解。やればやるほど悪化

 『ネット依存症』(PHP新書)の著者である樋口進医師は、2011年に日本で初めてネット依存症の治療を開始した久里浜医療センターの院長である。

 この本によると、ネット依存症に陥る原因の一つは、現実生活での人間関係のトラブル。職場や学校での人間関係がギクシャクしたり、いじめや仲間外れに遭ったりしたことから、そのストレスを解消するためにオンラインゲームにはまる。

 夜中までプレーして朝寝坊をする。遅刻が嫌だから職場や学校に行かない。家でオンラインゲームをする……。こうした悪循環に陥るようだ。

 樋口医師によると、子どもはネット依存症になりやすく、だいたい1カ月、早いケースでは1週間前後で“依存”と言える状態になる。オンラインゲームのほかインスタグラムなどのSNS、動画といったさまざまなもので依存が生じるらしい。

 「そのうち飽きる」というのは大きな誤解で、やればやるほどハマっていき、ネット依存症は悪化していく。

 ネット依存症は、スマホなどを取り上げても治らない。先に述べたように、子どもの場合は親に暴力を振るう傾向も見られる。

 初期の状態なら、家族でネット依存症の危険性を共有し、適切な利用方法を話し合って、利用時間などに制限を設ける。同時に、原因となった人間関係のトラブルなどに親子で向き合うことも大事ではないだろうか。重度になったら、医療機関などへの相談を強くお勧めする。

 オンラインゲームなどに熱中し生活に支障を来す「ゲーム障害」を、WHO(世界保健機関)は病気として分類すると発表した。ネット依存症も病気だととらえ、見守ったり見過ごしたりせず、早期発見・早期治療が重要だ。
(取材・文=森真希)

森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。

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