減量すればするほど「膝関節症」の痛みは軽減
慢性的な膝の痛みに苦しむ変形性膝関節症(膝OA)の患者数は、世界中で2億5000万人以上に上ると推定されている。高齢者や肥満傾向の人は膝OAになりやすいとされる。
今回紹介する最新の研究で「過体重や肥満の膝OA患者は、体重が減少するほど膝の痛みが軽減し、健康関連のQOL(生活の質)も向上する」ことが明らかになったという。詳細は『Arthritis Care & Research』(6月18日オンライン版)に掲載されている。
これまで当サイトでは、「膝関節症」に関して以下のような記事を配信してきた。
●手術件数は年間8万件以上 人工膝関節置換術を受けてよかったと思う患者は96%!!
●ステロイド注射は効果なし!? 日本人の2500万人以上が苦しむ「変形性膝関節症治療」の新たな見解
●歩いているときに“膝カックン”……「膝折れ」での転倒・骨折の予防は、筋肉の感覚を“覚えさせる”こと
では、膝OA患者の体重と痛みの関連についての今回の研究について、詳しく見ていこう。
減量すればするほど「痛み」が軽減し「身体機能」も向上
米ウェイクフォレスト大学健康運動科学部門のStephen Messier氏らの研究グループは既に、肥満を伴う膝OA患者を対象に、食事療法と運動療法の有効性を検証するランダム化比較試験であるIDEA(Intensive Diet and Exercise for Arthritis)試験を実施。
その結果、18カ月にわたって10%以上減量すると膝の痛みが50%程度軽減し、関節の可動域も大きく改善したと報告している。
さらに同氏らは今回、IDEA試験のデータを用いて、膝の痛みを伴う過体重または肥満の膝OA患者240人を対象に、減量の程度が痛みの軽減や健康関連QOLの改善に及ぼす影響を調べた。
対象患者を体重減少率で4つの群(5%未満、5%以上〜10%未満、10%以上〜20%未満、20%以上)に分けて解析したところ、体重が減少するほど痛みが軽減するだけでなく、関節機能が向上し、6分間歩行距離や身体機能も有意に改善することが分かった。
「20%以上」の減量に成功した患者では、「10%以上〜20%未満」だった患者と比べても痛みが25%軽減し、身体機能も向上し続けたという。
さらに、減量するほど身体的および精神的な健康関連QOLスコアも改善し、膝関節にかかる負荷の程度や炎症マーカー(インターロイキン-6)の血中濃度も有意に改善した。