「デリケートゾーン」の悩みを抱える女性は少なくない(depositphotos.com)
夏は1年のうちで最も体のムレが気になる時期。特に女性にとって水面下での悩みといえば、「デリケートゾーン」のトラブルではないだろうか。
ムレによる臭いや痒みなどの不快症状、また季節を問わず起こりうる、膣周りの痛み、頻尿や尿漏れなど、人に言えないトラブルも放っておけない。しかし、こと下半身の事となると「病院に行くまでもない」と足が遠のいてしまいがちだ。
「自分の女性器について、意識しない人が多すぎます」――。そう指摘するのは、女性のためのクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」(千葉県松戸市)の院長である産婦人科医の八田真理子氏だ。
八田氏の元には、思春期から更年期まで、幅広い年齢層の女性が訪れるといい、3月に上梓した『産婦人科医が教えるオトナ女子に知ってほしい大切なからだの話』(アスコム刊)でも、年齢を問わずすべての女性に「膣トレ」の大切さを提唱している。「普段は何ともなくても、体調が悪くなるとトラブルが起こりやすいから侮れない」という膣について、八田氏に訊いた。
特に更年期は「膣」のターニングポイント
思えば、膣には女性の年齢に伴いそれぞれ悩みが出てくる――。思春期は生理痛や不順などのトラブル、セックスや性感染症にはじまり、20代以降は妊娠や出産、おりもの異常。そして更年期以降は、乾燥や臭い、性交痛……と、きりがないが、それらのトラブルとは自らの膣と向き合うことから、改善の一歩が始まる。
「いつも膣を意識しておくことは大切です。特に女性ホルモンの大きな変化が生じる更年期は、ターニングポイントとしてケアをしてほしい」
八田氏のクリニックを訪れる40代後半から50代の多くの更年期女性たち。平均50.5歳で閉経を迎え、人によっては自律神経の失調症状などの更年期障害に悩まされている。そんな「更年期以降の女性の膣」には、「女性ホルモンの低下によるおりものの減少から膣内フローラが変化し、膣壁が薄くなることより、膣炎などトラブルが起こりやすくなる」という。
八田真理子『産婦人科医が教えるオトナ女子に知ってほしい大切なからだの話』(アスコム刊)
「おりものには膣の中を守る菌がいますが、更年期を過ぎるとそのパワーが弱くなり、膣周りも痩せてきます。そのため、排尿時の尿が膣内に入ることによる悪臭、膣内への陰毛混入など、かゆみやおりものトラブルが起こりやすくなります。それに加えてさらに、頻尿や尿漏れなどの排尿障害の訴えも多いですね」
何歳からでも始められる「膣」のケア
また、「セックスレス大国・日本」を裏付けるような、「夫とのセックスが痛く辛くて、その誘いを拒否してしまう」という悩みも。男性も女性も、加齢に伴うホルモンの低下により性欲が減退することはあるとしても、実は女性の性交痛が原因でセックスレスになるケースも少なくない。
そして、「もう“女”ではない。もうセックスができない体なんだ……」と、檜舞台から降りる気持ちで人知れず落ち込む女性も。そうではなく、「誰でもこういう変化があることを知って、早くからケアしてしておくことが重要です」。
ケアはいたってシンプルだ。
「それはいくつになっても間に合います。80歳になっても、決して遅くはありません。まずは、石鹸で丁寧に優しく洗うこと。最近はデリケートゾーン専用ソープも発売されていますので、試してみる価値もあるかと。このとき、自分の『女性器をケア』することが大切。綺麗にメイクしてファッションセンスもバッチリなのに、膣には無頓着で、恥垢まみれ……なんて、『膣ブス』な女性に、診察室でたまに遭遇します」
VIO脱毛など剃毛は「自分の好みでととのえましょう」とのこと。
「ヘアには女性器を防御する役割もあるので、全剃毛を積極的に勧めることはしません。剃った後の痒みもトラブルにつながる場合もありますし。が、あまりにモッサモサだと、ヘアに雑菌が付いて臭いの元になることも。2~3センチ程度にカットしておくくらいがよいかもしれません」
最も清潔感のある状態は「フリー、つまりノーパン。それは普段は難しいので、就寝時に下着をつけない、日中は通気性の良い服を心がける。ショーツをまめに替えるなど。オバサンなのに、若い頃のファッションそのままパツパツのスキニーデニムの様なものを履いている方を見かけますが、これも体調の変化によっては、かゆみや痛み、頻尿や尿漏れの誘因になりやすいようです。ガードルやボディスーツも同様です」とのことだ。