尿漏れパッドで「カンジダ」に
ナプキンやおりものシートは、適切な替え時を守り、やはり通気性を意識すること。尿漏れがあると「年だから仕方ない」とパッドでやりすごす女性も多いが、できれば使わないで過ごせればそれに越したことはない。
「尿漏れを改善する方法の一つに、骨盤底筋を鍛えるトレーニングがあります。『誰にも言えない悩みだし、まあいいかな』と諦めている人も実は多い。体調が悪いときにおりものシートや尿漏れパッドを長時間使用していたら、カンジダに……なんて悪循環を生むことも」
八田氏のクリニックを訪れる女性には、カンジダ腟炎の患者が多いという。また最近では「セックスレスなのに、性行為感染症にかかった」女性もいるそうだ。
「ある時立て続けに、性行為感染症であるトリコモナス膣炎の方が来院したことがありました。本人たちは『夫とは何年もしていないし、まさか私が』と。話を聞くと、共通点は『とても疲れていたときスーパー銭湯に行って、椅子や浴槽のふちに座った』とのこと。多くの人が集まるこのようなすべての場所が必ずしも悪いわけではありません。不運にも、たまたまいくつもの要因が重なって感染が起こったのでしょう。体力が低下しているときには注意して、濡れた場所に座る際はよくお湯で流すようにしましょう」
膣ケアのためのレーザー治療「モナリザタッチ」
さて、そうしたケアのほか、八田氏のクリニックで「モナリザタッチ」という膣ケアのためのレーザー治療を受けた高齢女性が、驚きの変化を遂げたことがあった。
「夫が亡くなり30年経ちますが、彼氏ができて、後押ししてくれたんです。『一生は一生だし、せっかくだから受けてみようかな』と……」
モナリザタッチがきっかけとなり、どんどん前向きな気持ちになっていく彼女。お化粧のノリもよく、髪の毛にもツヤが出て若返っていく姿には、誰もが目を見張るばかり。
「セックスは究極のアンチエイジング。『なぜ膣のケアするのか』の根本には、セックスの意義も心に留めておいてほしい」
一方、子宮を摘出した女性の膣ケアは、どう考えるかべきか?
「同じようにしてください。膣は変わりませんから。セックスもそれまで通り変わらずにできます。女性ホルモンの分泌量も、両側の卵巣を摘出しない限り変わりません」
卵巣を摘出し女性ホルモンが減少した場合でも、適切なホルモン補充療法を受けることで対処はできる。女性はいつまでも「色つきのオンナ」でいて欲しい。「年だから仕方ない」と、諦めてはいけないと思う。
「女性にとって膣ケアとは、身だしなみのひとつ。髪の毛やお顔を綺麗にするように、膣もケアして欲しい。というのが、産婦人科医の私の願いです」
月経による「聖なる生」が生まれ育まれ、健康のバロメーターでもある膣。一生を共にする「自分自身」なのだ。見て見ぬ振りをするのではなく、向き合っていきたい。
(取材・文=有山千春)
八田真理子(はった・まりこ)
聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田院長。日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医。日本マタニティフィットネス協会認定インストラクター。1990年、聖マリアンナ医科大学卒業。順天堂大学、千葉大学、松戸市立病院産婦人科勤務を経て、1998年、千葉県松戸市で女性のためのクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開業。女性の幸せを願い、サポートするクリニックとして、思春期から更年期までの幅広い女性の診療を行っている。