スマホの普及とともに自律神経性の「うつ」が激増(depositphotos.com)
うつ病や双極性障害(躁うつ病)など、いわゆる「気分障害」にかかる20〜30代が激増している。原因は「ストレス社会」などと言われているが、実は「スマートフォンの普及と気分障害の増加は正比例」している。
スマホを使用するようになると、人は長時間、うつむき気味の姿勢で画面を見るようになる。欧米では「スマホゾンビ」と呼ばれるスマホ中毒状態だ。歩いていても、座っていても、始終うつむき気味の姿勢でスマホを見ていることで首に多大な負荷がかかり、スマホ首病(首こり病)発症の原因となる。
首こりは副交感神経の働きを悪くし、重症化すると自殺念慮を抱くまでになる。うつ病の発症要因となるスマホ首病は、どう予防・治療したらいいのか。東京脳神経センター・松井孝嘉理事長に話しを聞いた。
スマホ首病は、重症になると自殺志向に……
携帯端末の普及に伴って、気分障害の患者数が激増している――。
うつ病や双極性障害(躁うつ病)などの「気分障害」の罹患者は、1999年までは毎年44万人前後と横ばいだったが、2005年には92万人、2008年には104万人、2014年には111万人と15年間で2.5倍になっている。
20〜30代の若者を中心に「新型うつ」が増加を始めた2000年前後に、ドコモからFOMAが登場、2008年にはアップルからiPhone3Gが発売され、一人一台の携帯端末時代が到来した。
前編でご紹介したが、終始うつむき気味の姿勢でスマホを使っていると、首に多大な負荷がかかり、首の筋肉が異常を起こす。すると副交感神経の働きが悪くなり、さまざまな不定愁訴やうつ病(気分障害)などが生じるようになる。
「うつといっても、精神疾患である大うつ病の患者数は毎年ほぼ横ばいで増えてはいない。増えているのは、頚筋性のうつ(自律神経性新型うつ)だ。頚筋性のうつは、悪化すると自殺念慮を抱く傾向が非常に強い。自殺志向の温床になっているスマホ首病の蔓延を食い止めないと、大変なことになる。2017年に起きた座間事件という今までに経験したことのない奇妙な事件は記憶に新しいと思う。8人もの女性の自殺志願者が短期間に誘い出され命を奪われた。自殺志向がSNSで利用された、まさにスマホ時代を象徴するような事件だ」と松井理事長。
このスマホ首病による気分障害は、心療内科や精神科での大うつという精神症の治療では症状が改善しない。スマホ首病による気分障害は精神病の大うつではないからだ。副交感神経の働きを高めるために首の治療をすることで、症状は軽快するのだという。心療内科などで治療を受けても症状が軽快しない場合、頚筋性のうつを疑う必要があるだろう。
次ページでは、スマホ首病の予防と治療ついて解説する。