窃盗症(クレプトマニア)は「摂食障害」が引き金に(depositphotos.com)
万引きを繰り返し、挙げ句の果てに刑務所へと収監される若い女性たち。その背後には「摂食障害」という病があった――。
4月16日の北海道新聞(電子版)によると、「拒食」や「過食」を繰り返す摂食障害の女性受刑者数が増加しており、その数は昨年7月の時点で全国14施設に199人、そのうち66%の受刑者が「万引き」を繰り返したことによる服役だったという。
万引きを繰り返さずにはいられない「窃盗症(クレプトマニア)」について本サイトでは、大森榎本クリニックの斉藤章佳氏の話をもとに、これまでにも伝えてきた(参考:シリーズ「窃盗症(クレプトマニア)という病」)。
窃盗症(クレプトマニア)とは?
窃盗症(クレプトマニア)とは、国際的な診断基準である『DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)』や『ICD-10(国際疾病分類第10版)』にも記載されている世界共通の疾患だ。
診断基準は『DSM-5』によると「個人的に用いるためでもなく、またその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される」「窃盗に及ぶ直前の緊張の高まり」「窃盗に及ぶときの快感、満足、または解放感」などの項目が掲げられている。
そして冒頭に記したように、若い女性の窃盗症(クレプトマニア)は、摂食障害を併発していることが多いというのだ――。スーパーやコンビニで万引きを繰り返し、近くのトイレで過食嘔吐に及ぶ。「食べたい」という欲求を押さえられないあまり、犯行に及ぶという事実が、摂食障害という病気の深刻さを如実に表している。
前出の北海道新聞の記事によると、札幌刑務支所で受刑中の37歳の女性は、体重はわずか32キロ。20代後半から大量に食べては吐く生活を繰り返してきた。万引きで有罪判決を受け、執行猶予中に再び万引きをして逮捕。約1ヶ月後の保釈直後、財布に3万円が入っていたにもかかわらず、スーパーで牛乳やヨーグルトを盗んで逮捕され勾留されたという。
摂食障害が万引きの引き金になる原因について日本摂食障害協会は、「拒食や嘔吐が続くことで低栄養で脳が萎縮し、大量の食料品を確保しておきたいという衝動を制御できなくなる」こと、そして「どうせ吐くのだから買うのはもったいない」と思うようになることの2点を挙げている。
このような深刻な摂食障害は、過度のダイエットから始まるほかに、体重管理が激しいスポーツ選手が発症することもある。