親子の双方で社会的スキル・行動スキルによい影響
海外の研究でも「本を読み聞かせることで、子どもの言語や読み書きの能力が向上する」「子どもの脳の発達が促され、学童期の成績も向上する」などの効果が明らかになっている。
最近では、寝る前に本を読み聞かせると、親子双方の社会的スキルや行動スキルにもよい影響を与えることが明らかになっている。
香港大学社会福祉・社会行政学のQian-Wen Xie氏のグループが行った研究結果が、『Pediatrics』(3月27日オンライン版)に掲載された(ちなみに「Pediatrics」は「小児科学」という意味)。
研究グループは、約3300組の親子(子の年齢は0~3歳または3~6歳)を対象に、19件のランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を実施。本の読み聞かせが親子の精神面や感情面、行動面、社会性にどのように影響するのかについて検討した。
RCTでは、対象者を無作為に2つのグループに分け、1つのグループには評価しようとしている治療など(今回のケースでは読み聞かせ)の介入を行い、もう片方には介入群と異なる治療などを行う。
メタ解析については、独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合し、統計的方法を用いて解析することだ。
今回の研究で、読み聞かせを行うグループの親には、読み聞かせのトレーニングを実施したり、補助ツールを提供したりするなどの支援を行った。もう片方のグループの親には、こうした支援を行わなかった。
また、心理社会的な能力については、社会的感情の調整や行動面での問題、QOL(生活の質)、読書への関心、ストレスや抑うつ、育児能力、親子関係などの検査に基づき評価した。
心理社会的な能力には、自分自身をケアする能力や、自己肯定感を持ち、他者と有意義な関係を持つことで喜びを感じられる能力が含まれる――とXie氏は説明する。
解析の結果、親が子どもに本を読み聞かせることで、親子双方で心理社会的な能力が向上することが明らかになった。
この結果を踏まえXie氏は、「本の読み聞かせが社会的スキルや行動スキルを向上させると、自信を持って勧めることができる。子どもが賢くなるだけでなく、幸せな気持ちにさせ、親子関係も良好になる」と話している。
本の読み聞かせには、大きな可能性が秘められている。親子ではなくても、身近に小さな子がいるのなら、絵本を開いて読んであげるのはどうだろう。
(文=森真希)
森真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。