大酒飲みは若年性認知症のリスクが高い!
アルコールの多量飲酒が、このような若年性認知症を発症させやすいという研究がある――。
フランスのトランスレーショナル・ヘルス・エコノミクス・ネットワークのMichael Schwarzinger氏らの研究チームは、多量飲酒は認知症になるリスクがあるとする研究成果を『The Lancet Public Health』2月20日オンライン版に発表した。
研究チームは、2008~2013年にフランス都市部の病院に入院した患者のうち、認知症と診断された110万9343人を対象に解析。その結果、慢性的な多量飲酒が原因のアルコール使用障害が認知症、特に65歳未満で発症する若年性認知症の重要なリスク因子であることが明らかになった。
そして、慢性的な多量飲酒が原因とされるアルコール依存症や、アルコール依存症には至らないが飲酒による身体的・精神的・社会的な問題があるアルコール使用障害があると、アルツハイマー型認知症を含む全ての型の認知症のリスクが、男性で3.36倍、女性では3.34倍高かった。
また、解析対象者のうち5万7353人は若年性認知症だったが、その56.6%(3万2453人)にアルコール使用障害があり、多量飲酒は若年性認知症のリスク因子として特に重要であることも判明した。
研究を行なったSchwarzinger氏は「日常診療で多量飲酒のスクリーニングを行い、必要に応じて介入あるいは治療を行えば、アルコール関連の認知症のリスクを低減できるかもしれない」と説明している。そして「認知症とアルコール使用障害との関連については引き続き検証する必要があるが、アルコールが脳の構造や機能に永続的なダメージを与えた結果ではないか」と述べている。
つまり、アルコール使用障害によってリスクが高まるとされる高血圧、糖尿病、脳卒中、心房細動、心不全は、血管性認知症のリスクを上昇させ、多量飲酒者に多く見られる喫煙や抑うつ、低学歴も認知症のリスク因子である事実が明らかになっている。
Schwarzinger氏は「アルコール使用障害に起因した認知症は予想以上に多い。したがって、多量飲酒が全ての型の認知症の主要なリスク因子であることを認識しなければならない。アルコール飲料を入手しにくくする、増税や広告・販売への規制などの対策を講じる、アルコール使用障害の早期発見と早期治療を推し進めるなどが喫緊の課題になる」と語る。
一方、英エクセター大学医学部教授のClive Balland氏は、同誌の論評で「極めて重要な研究結果だ。今回の研究は、アルコール使用障害や飲酒が認知症を予防する上で修正可能なリスク因子であることが示された。アルコール使用障害や飲酒は認知症に関連するという明確なメッセージを人々に伝え、対策を進める必要がある」と強調する。
「多量飲酒は特に若年性認知症のリスク因子になる」――。ヘビードランカーならずとも聞き捨てならない明々白々たる事実だ! 今夜だけは、赤提灯も晩酌も控えよう!?
(文=編集部)
*参考文献
●公益財団法人長寿科学振興財団
●認知症ネット