シリーズ「恐ろしい飲酒習慣」第7回

酒の飲み過ぎで大脳が10~20%萎縮! 脳の機能障害でうつ病や認知症の原因にも

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アルコールは脳も破壊する(shutterstock.com)

 酒の飲み過ぎは、肝臓、すい臓、胃腸、心臓に悪い! 今回は、アルコールが脳、神経系、筋肉系、骨格系、ホルモン系、生殖系などに及ぼす甚大な障害やリスクを噛み砕いて話そう。

 酔っぱらいは同じ話を何度も繰り返す。家に帰った時の記憶が消えている。思い出そうとしても思い出せない。そんな経験があるだろう。なぜか? 酔っぱらうと、大脳はどのように変化し、影響を受けるのか?

 日経『Gooday』(2015年3月25日/生涯の総飲酒量が脳の萎縮に影響する)によれば、アルコールによる脳の影響を研究する自然科学研究機構生理学研究所の柿木隆介教授は、「アルコールが脳の働きを変化させ、感情のコントロール、平衡感覚、長期記憶に影響を与える」と話す。

 大脳(脳脊髄)には、有害な物質をブロックする血液脳関門(BBB/blood-brain barrier)という脳の関所がある。血液脳関門は、中枢神経のホメオスタシス(恒常性)を守るために、血液から大脳に有害な化学物質や異物が侵入するのを防御するシステムだ。分子量500以下のタンパク質や脂溶性の物質はブロックされない。アルコール(エタノール)の分子量は46.07で脂溶性のため、難攻不落のバリアー、血液脳関門でもやすやすとスルーする。その結果、大脳は麻痺する。

酔っぱらうと、前頭葉、小脳、海馬が麻痺!

 アルコールによる影響が出やすい大脳の場所はどこか?

 まず、人間の思考や理性をコントロールする「理性のガードマン」ともいうべき前頭葉が酔っぱらう。前頭葉のコントロール機能が乱れると、たとえば、大声でしゃべる、人の悪口や秘密を暴く、下ネタや自慢話を漏らす、遠い距離でも歩いて帰るなどの奇行を示す。

 前頭葉だけではない。酔っぱらうと運動機能を調節する小脳もおかしくなる。小脳は、平衡感覚、正確な運動、知覚機能などを司っていため、小脳が麻痺すると、千鳥足になる、スマホを操作できない、呂律(ろれつ)が回らないなど挙動不審に陥る。

 前頭葉も小脳も操縦不能になれば、次は「記憶の守護神」ともいうべき海馬もおぼつかなくなる。酒飲みなら誰もが知っている記憶の忘却だ。記憶がなくなるのはなぜか?

 海馬は、一時的に記憶する短期記憶と、短期記憶を保存する長期記憶という2つの機能がある。短期記憶は、すぐに消えるので保存できない。酔っぱらいが何度も同じ話を繰り返すのは、1度話をしたという記憶を保存できないからだ。だが、酔っていても家に帰れるのはなぜか?

 長期記憶は大脳に長く保存されている記憶だ。思い出記憶とかエピソード記憶とも呼ぶ。毎日同じ道を通れば長期記憶に保存されるため、酔っていても長期記憶のアーカイブ(書庫)から記憶を取り出せる。旅先などで酔いつぶれるとホテルに戻れなくなることがあるのは、長期記憶が帰り道の記憶を保存していないからに他ならない。酔っ払っても帰宅できるのは、まさに長期記憶のおかげだ。

 このように、酔っぱらうと大脳は大きなダメージを受ける。しかも、神経系や筋肉系の疾患の強力なリスクファクターになる。

酒の飲み過ぎは致命的な栄養障害を招く

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