本能で楽しむ医療ドラマ主義宣言! 第7回

『アンナチュラル』 現役医師が読み解く遠隔死亡診断の可能性 ミコトは死因を特定できるのか?

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医療職が日々抱く独特な感情

 そして今回、ミコトは法医解剖医として仕事を全うしつつも、被害者に寄り添ったり、加害者を憎いと思ってしまう人間味が表れていました。

 ある法医解剖医の先生は、ご遺体の解剖をしながら加害者を憎いと思ってしまうことはもちろんあるけれど、科学に基づいた事実を述べるためには感情を表に出さないように努力する、と本に書いておられました。

 検死の様な仕事もさることながら、日々、救急医療に携わる医師、生死に関わる医療を行う医者や看取りを行う医者は、時にこういった独特な感情にさいなまれています。医師も人間、表にこそ出しませんが、時に感情に負けてしまうことだってあるのです。自己管理ができていないと、精神的にやられてしまうこともあるのです。

 死に対してドライになりすぎても、感情的ななってもだめ。このへんのバランスを取ることが上手くできた者だけが、この世界では残っていくのでしょうか?

 ミコトがすべてのストレスから解放されて食べるおにぎり。日本人の定番としてはおにぎりを食べながら涙……かと思いきやミコトはどこまでもドライでした。もう限界、と思ってもお腹はすくものです。生命力の強さを感じさせるシーンでした。

『アンナチュラル』も残すところあと3回。毎回、心揺さぶられる作者の野木亜紀子さんの深い言葉の羅列。ここもこのドラマの見どころですね。自分の感情をうまく言葉に乗せることが苦手な私としては、短い言葉に奥深い意味を持たせることができる作者に尊敬の念を抱いてしまいます。

 法医学的には自殺、でもその人を自殺という心理的視野狭窄にまで追い込んだ環境・加害者の存在を、歯切れのよい言葉の中に、これでもかっていうくらい盛り込んでいましたね。

「生存者の罪悪感」、「亡くなった人と自分を分けたものは何?」、「なぜ自分だけが生きているのか」。

 改めて言葉にされると、ドキッとしてしまいます。

 いじめを知りつつ行動に移せなかった生徒の心情、動画配信に反応する若者の興味本位の言葉も、臨場感がありました。第7回を見て、『アンナチュラル』は今の日本の抱える課題を思い出させてくれる素晴らしいドラマだと、本気で思いました!


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井上留美子(いのうえ・るみこ)
松浦整形外科院長
東京生まれの東京育ち。医科大学卒業・研修後、整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに父のクリニックの院長となる。自他共に認める医療ドラマフリーク。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。
自分の健康法は笑うこと。現在、予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を開いてい。現在は二人の子育てをしながら時間を見つけては医療ドラマウォッチャーに変身し、joynet(ジョイネット)などでも多彩なコラムを執筆する。

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