障がい者の性を考える 支援ガイドブックが訴える自立とは?

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ダウン症のカップル。どのような障がいがあろうと「性に対する欲求や興味」があるのは当然(depositphotos.com)

 障がい者支援の現場のなかで、「性の話」は長年タブーであるかのように扱われてきた。

 特に知的障がいのある子の場合、親は子どもに性的欲求があることを頑に認めず、施設や学校でも「寝た子を起こすな」とばかり、積極的に性について教えることは避けられてきた。

 だからこそ、そういった子が思春期を迎え、自慰行為を覚えたり、人前で性器を触ったり、あるいは男女でキスやハグをするようになると、どのように対処して良いか途方に暮れることにもなる。

 だが、どのような障がいがあろうと、「性に対する欲求や興味」があるのは当然であり、性から遠ざけることは人生における貴重な学びの場を失うことになりかねない。

 そんな考えから、障がい者の性についてのさまざまなケーススタディを集めた本が刊行された。それが坂爪真吾・著『障がいのある人の性 支援ガイドブック』(中央法規出版)である。

「人は社会的に自立するためには性的にも自立するべきだ」

 著者の坂爪真吾氏は、東大卒業後の2008年、現在は一般社団法人となっている「ホワイトハンズ」を設立し、以来、障がい者の射精介助や、風俗で働く女性のための無料相談会「風テラス」、男女ヌードモデルによるデッサン会「ららあーと」など、新しい「性の公共」化を目指した多彩な活動を続けてきた。

 そのホワイトハンズの10年間にわたる「障がい者の性に関する活動の集大成」となるのが本書であり、ケースごとに読者に問いかける支援者向けの体裁を取りながら、一般読者にとっても性とは何かを考える上で大変興味深い内容となっている。

 本書には、肢体不自由の男性の初体験を援助するエピソードなどのほかに、脊髄を損傷して下半身の感覚がなくなり、事故後、彼氏とセックスしていない女性から「セックスや出産は可能なのか」を問われる話も掲載されている。

 彼女への回答としては、困難ではあるが、身体に負担がかからない体位を工夫したり、潤滑ゼリーを使うことでスムーズな性交を実現することも可能であり、出産についても大きなリスクはあるものの、産むかどうかの決定はあくまで本人に委ねられるべきである、というもの。

 何より問題なのは、これまでは妊娠したと医師に報告するだけで咎められることがあったことであり、人は社会的に自立するためには性的にも自立するべきなのだと、著者は各ケースを通して訴えかけているのである。

里中高志(さとなか・たかし)

精神保健福祉士。フリージャーナリスト。1977年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉ジャーナリストとして『サイゾー』『新潮45』などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に精神障害者の就労の現状をルポした『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。

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