連載「恐ろしい危険ドラッグ中毒」第44回

薬物中毒死急増のアメリカで平均余命が短縮! 日本のドラッグ汚染はどこまで?

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ドラッグ汚染大国・アメリカを反面教師に!(depositphotos.com)

 アメリカではオピオイド(麻薬)やマリファナ(大麻)などの過剰服用は深刻な問題である。

 ABCの調査によると、現在、アメリカでは1日129人が薬物過剰服用によって死亡。その数は、銃犯罪や交通事故などによる不慮の死よりも多いのが現状である。さらに驚くべきことに、アメリカ国立健康統計センターの報告では、2016年、オピオイドなどによる急性薬物中毒死が6万3000人以上認められ、前年の死亡症例よりも21%も増加していた(「HealthDay News」より)。

 この2年間で比較すると「悪性腫瘍」「心疾患」「肺炎などの呼吸器疾患」「糖尿病などの慢性疾患」による死亡率は低下または横ばいであったが、「薬物中毒死が急増」したため、アメリカ人の平均余命が2016年には78.6歳と前年よりも0.1年短縮したことのことであった。

 さらに2016年の死因では、「薬物中毒死を含む事故死」が「心疾患」「悪性腫瘍」に次いで第3位となり、前年3位の「肺炎などの呼吸器疾患」よりも上位にランクされた。

 特に25~54歳の年齢層で、薬物中毒死が「人口10万人あたり35人」と最も多かった。54歳以上の高齢者層では、むしろ2年間で減少傾向を示していた。

 またフェンタニルなどの合成オピオイドによる死亡例が、2015年に「10万人当たり3.1人」より翌年には「10万人当たり6.2人」と急増したことも判明。これらの報告より、現代の「病めるアメリカ」における薬物中毒の抱える深刻さがうかがえるであろう。
 

アメリカの薬物中毒の現況と比較して日本の状況は?

 「オピオイド」や「マリファナ」が薬物中毒の主流であるアメリカとは異なり、日本では「メタンフェタミン」や「アンフェタミン」などの覚醒剤中毒が蔓延していた。

 その歴史をたどると、1941年に当時の大日本製薬が発売した「ヒロポン」が先駆けとなった。戦時中には日本軍が兵士の疲労回復・眠気防止などを目的として戦闘に利用した。終戦後には備蓄されていた大量のヒロポンが闇市に放出されて、それを購入した多くの国民が中毒患者となり、死亡者も多数認められた。

 その後、日本政府が流通を遮断して終息に至ったが、暴力団などの非合法組織により、中枢神経興奮作用が強力な「アンフェタミン」などの覚醒剤を、中国、北朝鮮、韓国などより密輸して、国内に拡散させたことで、多数の中毒患者が発生した。

 厚生労働省の麻薬対策課の報告によると、2010年覚醒剤事犯検挙人員は1万2200人で、その後、次第に減少して、2014年には1万1148人となった。大麻使用で検挙された人員も同様に減少傾向を示し、2010年の2367人より2014年には1813人となった。この現象は、覚醒剤取締法や大麻取締法による徹底した取り組みが功を奏した成果であった。

 しかし覚醒剤事犯者の「再犯者の比率」は、2010年には59.1%、2014年には64.5%と、むしろ増加していた。そのため今後は「再犯者への対応」が重要な課題として挙げられよう。

 また大麻事犯では、アメリカでのオピオイド中毒死に認められる若年者層症例の増加傾向とは異なり、20歳代および未成年者の比率が、2010年の59.0%より、2014年には41.1%と減少傾向にあり、相対的に高齢者の占める割合が増加していた。

横山隆(よこやま・たかし)

小笠原記念札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認定クリニカルトキシコロジスト、日本腎臓学会および日本透析学会専門医、指導医。
1977年、札幌医科大学卒、青森県立病院、国立西札幌病院、東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手、札幌徳洲会病院腎臓内科部長、札幌東徳洲会病院腎臓内科・血液浄化センター長などを経て、2014年より札幌中央病院腎臓内科・透析センター長などをへて現職。
専門領域:急性薬物中毒患者の治療特に急性血液浄化療法、透析療法および急性、慢性腎臓病患者の治療。
所属学会:日本中毒学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本内科学会、日本小児科学会、日本アフェレシス学会、日本急性血液浄化学会、国際腎臓学会、米国腎臓学会、欧州透析移植学会など。

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