スマホ不眠にはブルーライトカットの眼鏡を(depositphotos.com)
デジタル機器から距離を置く取り組みを意味する「デジタルデトックス」という言葉がアメリカで生まれて6年ほどの月日が経つ。だが、近年私たちのスマートフォン依存は、ますます重症化していくばかりに感じられる。
それを端的に物語るのは、多くの人が「寝る前スマホ」を習慣化していることだろう。
2017年12月に養命酒製造が20~59歳のビジネスパーソン1000人を対象に実施した調査によると、「寝る前にスマホをいじる」と答えた人は41.4%にのぼる(『働く男女の冷え性とキャリアアップ・リーダーシップに関する調査』より)。
また若年層でも同様で、岩手県立総合教育センターが県内の高校生にアンケートを取ったところ、43.6%が「部屋を暗くしてからもスマホを操作している」ことがわかったという(『岩手日報』2017年12月31日)。
スマホなどの液晶画面から発せられている「ブルーライト」は、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制すことが近年明らかになっている。このため、夜間にブルーライトを浴びることは体内時計の乱れにつながり、睡眠に悪影響を及ぼすといわれている。
1週間の着用で睡眠時間が30分アップ
ただ、そうしたことを頭では理解していても、一度ついた習慣を改めるのはなかなか難しい。そんな「よく眠れないけど夜のスマホもやめられない」とお悩みの人にちょっとした朗報だ。
2017年、米コロンビア大学医学部のAri Shechter氏らによる小規模ランダム化比較試験(RCT)で、就寝前の2時間に「薄いアンバー(琥珀色)系の色が入ったブルーライトカット眼鏡」をかけると、不眠症の症状がある人の睡眠の質が上がることが示されたという。
この報告の詳細は、アメリカの医学誌『Journal of Psychiatric Research』1月号に掲載された。
「ブルーライトカット眼鏡」とは、レンズ部分にフィルターを施すことで液晶画面から発せられる<波長の短い青の光=ブルーライト>をある程度カットする眼鏡。一般に「PC眼鏡」とも呼ばれ、パソコンワークでの眼精疲労を和らげるために使用している人が多い。
今回の試験を実施したShechter氏によると、アメリカでは成人の2~3人に1人の割合で、入眠困難や中途覚醒といった不眠症の症状がある。にもかかわらず、就寝前の1時間以内にスマホやタブレットなどのデジタル機器を使用する習慣がある人の割合は約90%にものぼるという。
そこで彼らは、不眠症の症状がある男女14人(平均年齢46.6歳、男性6人女性8人)に1週間にわたって就寝前の2時間、アンバー系の色が入ったブルーライトカット眼鏡か、通常の透明なレンズの眼鏡のいずれかを使ってもらった。
その後、4週間の間隔を置いてもう一度1週間にわたり、ブルーライトカット眼鏡を使用した人には通常の眼鏡を、通常の眼鏡を使用した人にはブルーライトカット眼鏡を使用してもらった。なお、どちらの眼鏡も顔の側面までフレームが包み込む形状の「ラップアラウンド型」を採用した。
その結果、就寝前にブルーライトカット眼鏡を使用することで、参加者の睡眠時間が平均で30分延びた。さらに睡眠の質が向上し、不眠症の症状も改善することがわかった。
また、ブルーライトカット眼鏡を使用した人は入眠までの時間もわずかに短縮したが、こちらは統計学的に有意ではなかったという。