不妊治療の最新知見 子宮内フローラから卵巣凍結まで高度生殖医療(ART)を知る

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子宮内にもフローラ!?着床に影響がある?

 腸内フローラはよく知られているが、実は子宮内にもフローラが存在するという。体外受精により妊娠/出産できた女性の子宮内には、ラクトバチルス菌が多数を占めていた。しかしなかなか妊娠しなかった人の場合は、その他の菌のほうが多かった。子宮内の菌の構成を、次世代シーケンサーで解析することで妊娠しやすい子宮内環境を作るようにしているという。

 子宮内フローラとは異なるが、子宮内に銅が付着すると着床しにくくなるという。「銅は少なく、亜鉛は多め」が着床に適した子宮内環境とのこと。これも検査で調べることができる。

 山本モナさんが告白したことで有名になった多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)。片方の卵巣だけで10個以上の未成熟卵子ができ、成熟卵子が得られにくい。そのため不妊に悩む人は多い。通常、PCOSの治療では、飲み薬のクロミッドやFSHの注射薬などを投与することで、卵子を少しずつ成熟させて採卵する方法をとることが多いが、京野アートクリニックでは、未成熟卵子を体外へ取り出して培養(IVMという)。成熟卵子へ育ててから体外受精を行っている。妊娠率も良好とのこと。IVMを行っているのは、日本でも3施設しかない。

 注射薬などで卵巣刺激を行うと、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が生じるリスクもあるが、この体外培養ならその心配はない。PCOSでなかなか妊娠まで辿り着かないと悩んでいるのなら、未成熟卵子の体外培養という方法もひとつの選択肢だ。

 冒頭でご紹介したルーズ・ブラウンさんの母親は、卵管が完全に閉塞していたため、体外受精により妊娠した。しかし現在なら、卵管鏡下卵管形成術(FT)という治療を受け、自然妊娠が可能だったかもしれない。FTは、カテーテルを子宮から卵管まで入れ、その後、カテーテル内にバルーンとよばれる管を通す。バルーンの中には卵管鏡がついていて、閉塞・狭窄部位を見つけながら拡張することができる。つまり、詰まっていた卵管を通すことができるのだ。

 2016年にこの治療を受けた136人のうち、27名は一般不妊治療(タイミング療法・人工授精)により妊娠している。男性側が不妊の原因となっているのは、全体の40〜50%といわれる(男女で40%ずつ、双方に原因がある場合が20%)。男性の不妊検査というと、一般的には精液検査により精子の数や量、運動率などが調べられる。しかしまれに、脳の下垂体に原因がある場合などもあり、身体全体で判断することが重要となる。

 男性不妊の原因は大きく分けて、無精子症、精索静脈瘤、ED・腟内射精障害となっている。無精子症や精索静脈瘤が原因の場合、泌尿器科との連携が不可欠になるので、院内に泌尿器科の専門医がいると、女性の採卵日と男性の手術日(TESEなど採精手術)を同日にすることができるなど、治療上のタイムロスを防げる。

 また、人生に無精子症の患者の場合には、新鮮な卵子と新鮮な精子の組み合わせによる治療成績が最も治療成績が良いことも、過去900例以上の精巣内精子回収術の結果から紹介している。

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