大量に睡眠薬を服用しても死に至ることは極めてまれであるが……
筆者は長年、自殺を企図して大量の睡眠薬を服用し、昏睡状態にて救急搬送された患者を診察してきた。そして、時間の経過とともに意識レベルは回復することを認識している。
代表的な睡眠薬「フルニトラゼパム(1錠2mg)」を100錠以上服用した症例でも、呼吸管理と補液にて3日後には意識が回復した。
しかし、昏睡状態で屋外に長時間放置されたり、病院で治療を受けなかった場合には、生命の危険が及ぶ可能性もある。殺人事件では、昏睡状態に陥ったのちに、首を絞めたり、刃物で切り付けたりして犯行に及ぶケースがほとんどである。
不眠を訴えて数か所の心療内科、精神科などを受診したり、またインターネットを利用して大量の薬剤を手に入れることが容易に可能である。そして「デートレイプ・ドラッグ」や強盗、殺人などの犯罪に利用されかねない危険性があるので、厳に慎むべきである。
(文=横山隆)