市販の「咳止め風邪薬」は効果なし!抗ヒスタミン薬や非ステロイド性抗炎症薬にもエビデンスなし

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市販の「咳止め薬」が効かないのなら?

 では、眠れないほどつらい咳にはどう対処すべきだろう? Malesker氏によると、「1歳以上の小児」に対しては「蜂蜜」にある程度の効果があることを示した複数の研究があるものの、「1歳未満の小児」に「蜂蜜は与えるべきではない」と警告している。

 また、成人の咳には「亜鉛トローチ」が有効であるとの弱いエビデンスがあるが、使用を推奨するには不十分で、亜鉛には副作用もあるため注意が必要としている。このほか、「チキンスープ」や「ネティポット(鼻洗浄)」などの民間療法も強いエビデンスはなかった。

 ただし、Malesker氏は「お気に入りのお茶やスープを飲んで気分が良くなるなら、そうするべきだ」と話す。また、市販の風邪薬を試す場合、医師や薬剤師に相談することが望ましく、特に2歳未満の小児に薬を飲ませる場合は、かかりつけの小児科医師に相談すべきだとしている。さらに、市販の風邪薬には眠気などの副作用があることに加え、咳止めのシロップに含まれているデキストロメトルファンは、乱用リスクがあるので、注意が必要だという。

 米国立ユダヤ医療研究センターのDavid Beuther氏は「咳を止める効果的な手段がいまだに見つかっていないことにいら立ちを感じている。風邪による咳は睡眠やQOL(生活の質)に影響することもあるが、そんな時こそ休暇を取って安静にしたい。水分摂取も咳の原因となる粘液を洗い流すのに有効だ」と助言している。

 なお、頻繁に風邪をひく場合や咳が長引く場合は、軽度の喘息や慢性副鼻腔炎などのリスクもあるため、医師に相談すべきだ。

効果てきめん?「鼻から龍角散」!?

 その昔、中国・隋唐の御代。不世出の天才がいた。コンコンと咳をしたり、タラタラと唾を垂れても、珠玉のような美麗な詩歌を詠み、名句を捻った。そんな天与の奇才を知った時の名君は「咳唾成珠(がいだせいしゅ)」と驚嘆し、「咳唾珠(がいだた)を成す」と讃えた。

 その故事から、尊敬する人物に会見し、その話を傾聴することを「謦咳(けいがい)に接する」と言い習わすようになった。咳払いが激しくても、ひどく咳き込んでも、咳に一攫千金の値打ちがあったのだ。

 かたや、昨今は風邪の咳き込みは、忌嫌われる。忌嫌われるどころか、冒頭の研究のように手の打ちようがないと非難され、論断される有様だ。

 しかし、どんな禁じ手にも妙薬はある。ひそかにキメる薬として愛用されている妙薬といえば「ゴホンといえば龍角散」が健在だ。龍角散は、江戸時代に殿様の喘息薬に処方された、龍骨、鹿角霜、龍脳がルーツ。龍角散の主原料の生薬は、「キョウニン(杏仁)」「キキョウ(桔梗)」「セネガ」「ニンジン(朝鮮人参)」「カンゾウ(甘草)」「アセンヤク(阿仙薬)」「マオウ(麻黄)」などだ。だが、直接、喉の粘膜に作用して、効果があるため、水なしの服用を奨めている。

 ところが、ひそかに広がっているのが「鼻から龍角散」だ。細かな粉末の龍角散を片側の鼻の穴を塞ぎ、反対側の鼻から一気に吸い込む。ストローや筒状にした紙も使う。急激に鼻腔に龍角散の粉末が吸い上げられるので、爽快感が倍増し、鼻づまりの改善に効果てきめんとか。もちろん鼻から吸引する効果のエビデンスはないので、用法・用量を厳守したいとことだ。

 キメ薬の効き目も、決め手も怪しいが、大気汚染大国・中国の観光客は、龍角散を爆買いするも、むべなるかな! 風邪の季節到来。咳、喉、声に妙効ありの龍角散でキメれば、米学会のファイナルアンサーもドンデン返しできるかも!?
(文=編集部)

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